第14回 コロナ禍のPBIS−今できることを考えよう−【マルチレベルアプローチ(MLA)実践 8年間の記録】

2020年度4月,2ヶ月間の休校でスタートしましたね。

それから2年が経ち,あの時入学した1年生は,もう3年生になりました。

あの時,何よりも私が心配し,困難な状況でも大切にしようとしたことがあります。

いかに,子ども達をつなぐか!?

マルチレベルアプローチの最も大切にしているところは,子ども達同士のつながりの力で子ども達を育てるということ。

休校,行事の中止,マスク,ソーシャルディスタンス,黙食…

子ども達のつながりを作るどころか,もともとあったものまで分断してしまう状況でした。

今回は,2年前のあの時,私が学年主任として何を考え,どんなことに取り組んだかを紹介します。

 

半デジタル班ノート

私が,子ども達を効果的かつ効率的につなぐために活用してきたのが,ピア・サポートプログラムを活用した班活動であることは,このブログでも何度か紹介して来ました。(気になる方は,ぜひ過去の記事を読んでみてね)

しかし,2年前の4月,5月は休校だったため,班活動はできませんでした。(えらいこっちゃ!どないしよ!!やばいがな…ってなりましたね)

そこで,せめて班にどんなメンバーがいるのかを知って,少しでも仲間を意識してもらうために考えたのが「半デジタル班ノート」でした。

班ノートとは,班のメンバーで回す交換ノートで,自己紹介や最近の出来事などなど,ネガティブな内容でなければなんでもOK!これまでの学校でもずっと取り組んできました。(子どもが書いてきたものが道徳のネタになったこともあったなぁ)

1年間が終わると,私の宝物としていただきます(これ,ほんの一部です)

コロナ禍では,実際に班ノートを回すことはできませんでした。かと言って,メールだけのやりとりでは味気なく,やっぱり手書きの文字や絵の方がいろんなことが伝わります。

…そうか!手書きしたものをメールで回せばええんや!!

学年の子ども達を,8つ(学年スタッフの人数)のグループに分けて,配布した班ノートの用紙に手書きで書き込んだものを写真に撮り,メールで回していきました。その流れはこんな感じ。

子ども→学年主任(私)→グループ担当の先生→学年主任→次の子ども…

メールアドレスは,保護者に案内を出して提出してもらい,学年主任である私が一括管理しました。(8つのグループのメールのやりとりを,なるべく滞らせることなく1人で回していくのはまぁまぁ煩雑な作業やったけど…)

これにより,休校で学校に来れていない子ども達をどれだけつなぐことができたかはわかりません。ただ,子ども達は結構熱心に書いてくれたし,少人数のグループに1人の担当の先生がついたことで,その後学年の先生が担任,副担関係なく,積極的に子ども達に関わってくれたと思います。

「今できること」をみんなで考え,PBISの行動表で共有

もう一つ,休校中の登校日を活用して行ったのが,PBISの行動表「今できること」でした。

PBIS(Positive Behavioral Interventions & Supports)では,応用行動分析(ABC理論)に基づいており,最初に,子ども達に身に付けさせたい「価値」を明示し,その価値を体現する望ましい行動をより具体的に考え(行動表として共有),それに応じた行動が見られた時に強化を行い,さらに望ましい行動が増えるように促す指導方法です。

より厳密に言えば,子ども達の行動をデータ管理し,良い行動が増え悪い行動が減るように詳細にポジティブな支援と介入を行なっていきます。子ども達のリスクに応じて個別に丁寧に支援したり問題行動への介入を行なったりします。

MLAでは,このPBISの第一層支援と言われるものを1次的生徒指導として援用し,子ども達が自分の力で頑張れる力を引き出すように実践していきます。

今回は,休校中の子ども達が,少しでも仲間と目標を共有し仲間とともに頑張ろうと思えるように,行動表による望ましい行動の共有のみを行いました。(強化したくても子ども達が学校にきていないのでしょうがない!)

具体的には,縦軸に学力面と生活面,横軸に学校,学校外,オンライン環境を設定し,2×3のマトリックスを作成しました。

クラスごとに8つのグループを作り,グループごとに,6つの枠組みの中で「今できること」を考え意見交流を行い,ポスターにまとめていきました。

完成したポスターの内容について,クラスごとに発表を行い,他のクラスの発表は,ビデオに撮ったものをTeamsに公開し各自で見られるようにしました。

「今できること」実践のための学年通信と指導案
各グループで作った「今できること」ポスター
クラスごとに発表

休校明けに作った行動表とポジティブカード

休校あけには,この時の取り組みをベースとして,きちんとした行動表を作成し,強化子としての「ポジティブカード」も活用しました。

行動表は,3つの価値を「思いやり」,「責任」,「安心・安全」とし,これらを体現する行動を,登下校や学活,授業,給食などのように,場面ごとに子ども達とともに考え表にまとめました。

行動表とポジティブカード

学年スタッフにも理解してもらい,子ども達のポジティブな行動支援を進めました。

PBISは,このポジティブカードによる望ましい行動の強化が注目され多くの先生が実践していると思います。

実際に子ども達の望ましい行動が増えるのはもちろん,集団の中に正しい行動を大切にする風土が醸成されていきます。また,(実はこれがデカイと思っているのですが)先生達の指導行動が変化していきます。

先生の子どもへの声かけが変わってきたり,何より先生が子ども達の問題行動よりも成功した場面や良い行動に注目したりするようになります。(自分自身もそうだったなぁ。廊下で会ったらまず,「シャツ入れろ!」とか言うとったな)

余談ですが…

今年度,スクールカウンセラーをしていて,相談に来る子どもや保護者は3年生(小学生も中学生も)が多いような気がします。(ちゃんとデータは取ってませんが)

コロナ禍で入学した子ども達には,いくらその時に多くの先生が様々な工夫をしていても,確実に“つながり”が足りていない“つながる力”が育っていないのだと思います。

今一度,こうした子ども達の実際を振り返り,子ども達の成長・発達を支援し,スキルや感情理解を促し,つながりの力を持った集団育成に力を注いでいきましょう!

そのためのモデルがマルチレベルアプローチなのです。