AISES主催のMLA専門講座(社会領域アドバンス)「SEL(社会性と情動の学習)②講座」の研修レポートをお届けします。福岡教育大学の山田准教授を講師に迎え、1回の授業を効果的に行う原則、教科指導や日常での汎化・定着、学校組織としての継続体制、そして教職員自身の社会情動的コンピテンシー(SEC)向上まで、講義で語られた実践と理論をまとめました。
効果的な授業実践のポイント(SAFEの原則と個に応じた「足し場かけ」)
効果が実証されたSELプログラムに共通する原則として、本講座では「SAFE(セーフ)の原則」が紹介されました。1回の授業をより効果的なものにするためには、以下の4つの要素(S・A・F・E)を押さえることが重要です。
- S(Sequential / 連続性):単発の1回で終わらせず、順序立てて継続的・系統的に展開する。
- A(Active / 活動的):教師の話す時間を抑え、話し合いやロールプレイ、思考・振り返りの時間を十分確保する。(抵抗感がある子には観察学習・チェック役としての参加も許容する)
- F(Focused / 焦点化):楽しさの中にも目的を持ち、狙いに合った活動(ゲーム形式等)を選び、振り返りを通してポイントを確実に確認する。
- E(Explicit / 明確):授業の意義、狙い、目標、教えたいポイントを明確にし、導入段階で子どもへ示す。さらに教師自身も、アンケートやアセス等をもとに「①狙いがある程度達成できている子」「②活動を通して狙いを達成してほしい子」「③狙いの意識が高まってほしい子」の3段階で児童生徒を事前把握し、個別に重点的な関わりを行う。
また、子どもの実態に応じた指導として、認知的徒弟制に基づく「足し場かけ(スキャフォールディング)」が挙げられました。支援の手厚すぎが成長を阻害しないよう、教職員間で関わり方を統一します。講座では関わりを3つのレベル(①答えや解決策を直接教える/モデルを示す、②「どうしたらいいと思う?」と問いかけてヒントを出し言語化を支える、③背中を押して見守り励ます・賞賛する)に分けて支援を行う実践例が紹介されました。
スキルの汎化・定着と教科指導でのSEL統合
授業で学んだスキルを日常で活用できるようにするためには、掲示物の活用や日常的な問いかけ(「どうだった?」「相手の気持ちは?」)、さらには教科指導や学級づくり(PBIS)との統合が有効です。
学校全体で継続するための組織づくり
SELを学校現場で定着・持続させるためには、単一の教員だけに頼らない組織的な仕組み化が必要です。
- 担当部署と推進役の明確化:生徒指導部、教育相談部、人権教育部などにSELの担当役割を明記し、異動等による風化を防ぎます(月1回学年担当が集まって事例共有・励まし合うなど)。
- 学校経営要領への明記:校長のリーダーシップのもと、学校経営要領に位置づけを記載します。
- 小規模からのスタート:理解や関心のあるクラス・学年で先行実践を行い、手応えを得ながら学校全体へ広げます。
- 年間計画と教員研修:4月の計画説明から始まり、5月のモデル授業公開、夏休みの振り返り、9月の保護者参観、11月の振り返り、2月のまとめまで、見通しを持った研修サイクルを組みます。
教職員自身のSEC(社会情動的コンピテンシー)向上とモデリング
指導者である教職員自身の社会情動的コンピテンシー(SEC)とウェルビーイングの重要性が、プロソーシャル・クラスルームモデルなどを通して強調されました。
さらに、子どもに指導する前に教員同士で15分程度のロールプレイ等のミニ体験研修を行うことで、子ども目線(心理的安全性や照れくささ)を理解し、教員自身の対人関係や自己開示の力(SEC)を高める効果が期待できます。
参加者の声
・受講者同士で対話する中で、教員自身の自己開示や安心安全な環境づくりの大切さを強く実感しました。
・完璧な指導者として振る舞うのではなく、教員自身も感情のコントロールや対人コミュニケーションのスキルを活用している姿を見せることが、子どもたちへの何よりのモデリングになると感じました。
・教科指導の中にSELを統合させる視点は大変新鮮で、「教員の専門性や長所(数学や音楽などの教科の魅力)を伸ばし、子どもが諦めずに取り組むための土台としてSELを活用する」という捉え方に非常に勇気づけられました。
・単に「何が足りないか」を補う指導ではなく、子どもと教員の強みを生かし、学校組織全体で認め合いながら長い目で子どもたちの成長を支えていくマインドセットを深めることができた貴重な講座でした。



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