MLAは,1次的生徒指導,2次的生徒指導,3次的生徒指導からなり,1次,2次の具体的な実践プログラムとして以下の4本の柱があります。
- PBIS(Positive Behavioral Interventions & Supports)
- SEL(Social & Emotional Learning)
- ピア・サポート
- 協同学習
このシリーズを通じて,これらのプログラムの具体的な実践についてお伝えしてきました。読んでいただいた皆さんはどのような感想をお持ちでしょうか?
- 「子どもの成長につながるいい実践だな」
- 「MLAの具体がわかってきた」
そう思っていただけていれば幸いです。
ただ…
- 「実際にやるとなると,計画,立案,提案,実施まで,どう進めればいいかわからない」
- 「そもそも,他の先生の賛同が得られるかどうか心配」
…みたいなことを感じていませんか??
先日,とある研究のために栗原ゼミの卒業生で卒業10年以上を経過した4人の先生にインタビューする機会がありました。
みなさん,生徒指導主事や学年主任,教育相談担当など,いわゆる学校のミドルリーダーとして活躍されていました(みなさん,さすが栗原研の卒業生ですよね!)。
で,どの先生も口をそろえて話していたのが…
- 「学校全体の取り組みにするために賛同を得るのがむずかしい」
- 「考え方の古い年配の先生が影響力をもっていて…」
(いやもうほんま,そんなこというて今まで通りのことをしとって状況は改善してへんし,むしろ悪化してるのに,やれ負担やとかやれ今まではこうだからとか,ヘリクツばっかりいうてなんやねん!四の五の言わずにやれば絶対よくなるっていうてるのに!!)
おっと,ちょっと心の声がもれてしまいました,すみません,しかしまぁ,このブログを読んでいるみなさんは,少なからず同じような思いをしているのではないでしょうか?
というわけで,今回のブログでは,MLAを学校全体のものにするためにどうすればいいか?そのヒントをお伝えしたいと思います(ただ,私は達成することはできなかったので,その辺の課題みたいなのも含めて書きますね)。
- まずは研修!MLAの校内研修を実現させる!!
新しい考え方に基づく教育活動を学校に取り入れようとするときに必要なのは,やはり校内研修!なんとかしてMLAに関する研修を校内で実施する必要がある。それも,できれば講師を呼んで話してもらう(やっぱり説得力が違うからね)。しかも1回きりの研修ではなく,年間に数回は行う必要がある。
しかし,何もないところにどうやって??
ただ,「講師を呼んで年間数回の研修が必要なのでやりましょう」で,「はい,そうですね。やりましょう」とはならない!正味,そこがみなさんの悩みどころですよね。
大阪市には,「がんばる先生支援事業」というのがあります。実践的な研究を行うことを申請し,そのために必要となる費用を大阪市に負担してもらえるというものです。私がMLAと出会って5年目の2017年に,校長先生から「この事業に申請したいから,申請案を職員全体に公募します」とうアナウンスがありました。
“これはチャンス!”と思い,校内にMLAを入れるための案を提出しました。
この提案は,校内では採用されたものの,大阪市の「がんばる先生支援事業」では不採用になり,残念ながらお蔵入りとなってしまいました。
当然,諦めきれない私は,翌年度の申請でも提案し,見事この研究事業費を獲得しました。こうして,学校全体にMLAを取り入れるための研修を,2018年度と2019年度の2年間に実施することが決まったのです。
- MLA導入に向けた2年間の歩み
MLA導入のために2年間で取り組んだことが以下の通りです。
2018年度
- 7月 校内研修「MLAの概要」 講師:山崎茜(広島大学)
- 8月 総社市「だれもが行きたくなる学校づくり研修会」参加
- 11月 「だれもが行きたくなる学校づくり研修会」の伝達研修
- 1月 研究授業・研究協議(協同学習) 講師:山崎茜(広島大学)
2019年度
- 6月 校内研修「アセス」 講師:山崎茜(広島大学)
- 9月 校内研修「教育相談」 講師:米田成
- 10月 校内研修「事例研修」(学年ごと) 講師:米田成
- 12月 総社東中学校視察
- 2月 研究発表・研究授業 講師:山崎茜(広島大学)
2018年8月の総社市「だれもが行きたくなる学校づくり研修会」への参加は,各学年から2名ずつの6名で参加しました。参加したのは若手の先生達で,たくさん学んで校内で伝達研修会をしてくれました。
2019年6月のアセス研修の後,全学年でアセスを実施することを提案し,いろんな意見がある中(そりゃあもうほとんどケンカですよ。はい,最終的には勝ちました☆),全学年アセス導入が決まりました!この時は,総社に行ったメンバーの後押しも大きかったと思います。
2019年の9月・10月に行った教育相談研修と事例研修は,さすがにそう何回も講師を呼べず,私自身が講師としてみなさんと学び合いました。事例研修では,実際のアセスの結果を見ながら支援策を検討しました。その詳細が,前々回と前回のブログの内容です。
2019年12月には,何人かの先生と総社東中学校に視察に行きました。メンバーは次年度の学年主任の先生。総社東中学校の皆さんは大変あたたかく迎えてくださり感激,そしてその教育活動の充実ぶりにさらに感激しました。
この2年間の研修は,十分ではなくとも必要なことはなるべくやったと思います。みなさんの反応も上々で,後はMLAを取り入れた教育活動を具体化していくという感じでした。しかし,実際にはそうなりませんでした…。
この歩みの続きを阻んだのは…転勤でした。
結局,2019年度が私にとってのラストイヤーになってしまいました。あと3年いれば,この2年間をベースに組織を改編し,MLAのそれぞれのプログラムを実践していくシステムを作って,“子ども達の明るい未来”のために私が作りたかった学校のイメージが具体化していたかもしれません。
とても残念で悔いが残りますが,この2年間の取り組みを通じて,学校全体に何か新しいことを取り入れる時に大切なことにいくつか気づくことができました。
- 単発の研修ではなく,2年間で1つのパッケージとして研修を計画したこと
- 「がんばる先生支援事業」という校長先生の主体的な動きによる取り組みだったこと
- 「だれ行き研修」に若手メンバーが参加し,それぞれの言葉で伝達研修をしたこと
- 総社東中の視察に次期学年主任の先生が参加し,学校改革の必要性を感じてもらえたこと
- 本気で学校をよくしたい,そのために必要なことを伝える真剣さを受け取ってもらえたこと
研修で座って学ぶだけじゃなく実際をしっかり見ること,若手が主体的に学び自分のものにすること,管理職やミドルリーダーの後押しがあること,そうやって仲間を増やしていくことがポイントなんだろうなと思いました。
そして,この続きをやることができる機会が今後もしあれば,同じ思いを持つことができたメンバーに,例えばピア・サポートリーダーとかSELリーダーのように,MLAのプログラムごとのリーダーになってもらって,木の幹から枝葉が広がるように,学校全体に豊かな教育を広げていきたいなと思います。
今は,この2年間プラスαをいつかどこかの学校で実現したいと思って広島大学大学院での学びの日々を送っていきます。