「学校のあらゆる出来事は一つの理論で説明できる」栗原先生に学ぶ、交流分析と問題解決の奥義~(7/11開催報告)交流分析①(全2回)

先日、MLA専門講座として、交流分析①(全2回)講座が開催されました。
今回のテーマは「心理アドバンス:交流分析」。講師の栗原先生からは、ご自身が長年の学校現場での実践の中で、あえて交流分析を教育実践の土台に据えるようになった経緯も含めてお話しいただき、学校現場で起こる複雑な人間関係や課題を、一つの理論で読み解いていく濃密な時間となりました。

  1. なぜ、今「交流分析」なのか?
  2. エゴグラムで見える「心の戦略」
  3. 支援を成功させる「3つのP」
  4. 絶対条件について

なぜ、今「交流分析」なのか?

教育現場には、トラウマ、家族関係、学習支援など、それぞれの分野を専門とする理論や研究がたくさんあります。しかしそれらは用語も前提もバラバラで、一人の教員がすべてを勉強して自分の実践の中で統合していくのは簡単なことではありません。栗原先生は、その「判断の軸」となる土台として交流分析を位置づけているとお話しされていました。

理論の土台:
トラウマ、家族、学習などバラバラな専門知を統合し、判断の軸となるのが交流分析です。

社会モデルへの転換:
個人の内面(心理モデル)だけでなく、学級という「社会」における人と人の交流に焦点を当てます。学級は一つの社会であるにもかかわらず、個人の内面だけに注目するモデルで説明しようとすることに疑問を感じてきた、という先生ご自身の実践の中での気づきも紹介されました。

エゴグラムで見える「心の戦略」

P(親)、A(成人)、C(子供)のバランスは、その人が生き抜くために選んできた「戦略」でもあります。今のエゴグラムの形は、これまでの経験や環境の中で必然的にできあがってきたものであり、どんな形であっても、それ自体が悪いわけではないという点も強調されていました。

柔軟なA(成人)の機能:
状況に合わせて行動パターンを変えられる力が重要です。P・A・Cのいずれかがうまく機能していない状態は、対人関係のトラブルにつながりやすくなります。

共依存の回避:
良かれと思って手を貸しすぎることが、相手の「考える力」を奪っていないかを分析します。講座では、先生が子どもの代わりに「どうしたらうまくいくか」を考え続けてしまい、子どもの側は「ただ嫌だ」と言うだけになってしまう関わり方も、共依存の一例として紹介されました。厳しい・優しいといった関わり方そのものが問題なのではなく、こうした共依存的な関わりが学校の中に気づかれないまま広がっていることが問題である、というお話が印象的でした。

支援を成功させる「3つのP」

リーダーや支援者が持つべき、人を動かすための必須要素です。講座では、部下に思い切った挑戦を許した校長先生のエピソードを例に、この3つの要素が具体的に説明されました。
 1. Permission(許可): 
「やってごらん」と背中を押す。挑戦する側は、この許可がなければそもそも動き出せません。
 2. Protection(保護): 
「失敗しても守る」安心感。責任は自分が取るという言葉があってはじめて、人は一歩踏み出せます。
 3. Potency(ポテンシー): 
守り切る力強さと伴走。許可と保護を口先だけでなく、実際にやり遂げられると思わせる力です。最近の言葉で言えば「伴走」に近いとも説明されていました。

問題解決の【絶対条件】

講座では、親子関係が「行かなくていい」(親のP)と「グズる」(子のC)の間でぐるぐると回り続け、状況が動かなくなってしまう事例が取り上げられました。このように親子の間にA(考える機能)が働いていない状態を「問題が凍結した場面」と表現し、そこから抜け出すためには、以下の2点を刺激することが不可欠だと説明されました。
 A(Adult)を刺激する: 
「どうして行きたくないのかな?」というように発問を投げかけ、当事者自身に考えさせること。
 FC(Free Child)を刺激する: 
人間のエネルギーの源はFCにあるため、楽しさやワクワクする感情を引き出し、動くための原動力をつくること。

受講者コメント

今回の講座に参加された先生方からは、次のようなコメントが寄せられました。

栗原先生が「学校で起きるあらゆる出来事を、一つの理論で説明できるのが交流分析です」と言い切られたことで、「それならば絶対に理解したい」とワクワクしながら4時間を過ごしました。具体的な事例が豊富で、自身の経験とつなげながら理解でき、今自分が抱えている課題へのヒントも得られました。中でも、「”問題凍結場面”での対処方法」として力説された、①Adultを刺激する発問で当事者に考えさせる、②Free Childを刺激し楽しませながら関わる、という2つの【絶対条件】は特に印象的でした。さらに、不登校事例への関わり方のお話では、ブリーフセラピーにも触れながら「問題解決ができないと嘆くよりも、解決のリソースを探して育てていく」という発想の大切さを、以前伺った「石のスープ」のたとえ話とともに改めて考えさせられました。栗原先生のお話は教育全体を俯瞰しつつ、「明日からの具体的な一歩」もわかるので勇気とやる気が湧いてきます。動画を何度も見直し、「交流分析」と今回の【絶対条件】・問題解決の奥義を、確実に自分のものにしていきたいと思います。

『AISES 学校教育開発研究所』は子どもと学校の支援、教育に携わる人材育成を行うことを目的とした団体です。eラーニングや直接研修などを通して、発達障害支援を含む学校教育現場の様々な課題に対応する理論・実践例・教材・教具等を提供します。

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