こんにちは。AISES事務局です。
今回は、6月27日に開催されたMLA専門講座のベーシック講座『UDL(学習者中心の授業作り)』の開催レポートをお届けします。
近年、学校現場では、学習についていけない子ども、授業中の集中が続かない子ども、多様な文化的背景や特性を持つ子どもなど、学級の多様化が急速に進んでいます。
従来の「平均的な子ども」に合わせた一斉指導や一律の教材では、多くのバリア(学びの障壁)が生じてしまうのが現状です。
「すべての子どもが主語になる授業」をどうつくるのか。
今回のMLA専門講座では、「UDL(学習者中心の授業作り)」をテーマに、子どもたち一人ひとりの学びやすさを確保するための考え方と具体的な授業デザインについて学びました。
MLA専門講座とは
AISES(学校教育開発研究所)が提供するMLA専門講座は、不登校やいじめなど複雑化する教育課題に対応できる「揺るがない実践力」を持つ教師を育てる研修プログラムです。
心理、社会、学習支援、キャリア支援、マネジメント、そしてMLA領域という6つの専門領域で構成され、ベーシック・アドバンス・マスターの3段階で体系的に学ぶことができます。(MLAの領域・体系について詳しく見る)
今回の「UDL入門」は、その中でも「学習支援」の土台となる基本的な考え方や授業デザインを学ぶためのベーシック講座として開催されました。
UDL(学びのユニバーサルデザイン)の基本理念と最新ガイドライン
まず、川俣智路教授からUDLの基本的な考え方と最新の動向が紹介されました。
UDL(Universal Design for Learning)とは、学級にいる多様な子どもについて、その子自身が自分の学びを舵とれる学習者になるための学習環境デザインぼための概念フレームワークです。
特に重要なのは、「子どもに問題(ぼーっとしている、手が止まっている なども含む)があるのではなく、学習環境に障害がある」という発想の転換です。
教室の中に潜む「ゴールの曖昧さ」「一律の教材」「固定された指導法や評価」といった学びを阻むバリアを取り除くことで、どの子も学びやすさを確保することができます。
また、最新の「UDLガイドライン 3.0」へのアップデートのポイントとして、以下の3点が解説されました。
- 学習者のアイデンティティの尊重:多様な文化的・個人的背景を包摂する。
- 教師自身のバイアスの問い直し:私たちの無意識の学習への思い込みが子どもの学びを止めていないか省みる。
- 学習者エージェンシーの発揮:子ども自身が学びをコントロールできるよう支援する。
授業に潜む「カリキュラムのバリア」と教師のバイアス
続いて、髙橋あつ子教授から、具体的な授業場面におけるバリアの発見と、教師のバイアスについて講義がありました。
例えば、授業中に「鉛筆が止まっている子」「白紙のままの子」を見たとき、私たちはつい「子どものやる気や能力」のせいにしてしまいがちです。しかし髙橋先生は、「これを子どものせいにするのではなく、自分の授業デザイン(カリキュラム)の側にバリアがあったと捉えることが、UDLのスタートライン」と強調されました。
また、知らず知らずのうちに教師が抱えている以下のような「バイアス」も、新たなバリアを生み出す原因になります。
- 「話し合い(対話)活動をすれば主体的な授業になる」という思い込み
- 「ワークシートに文字で書かせないと公平な評価ができない」という思い込み(書くことが苦手な子にとっての表現のバリア)
- 「お母さんが宿題を見る前提」「男女で混合グループを作る」といった生活・ジェンダーに関する思い込み
伝統的な「やらせてなんぼ」「一斉指導一律教材」の指導法から脱却し、最初からバリアが生じることを想定して、複数の学びの選択肢(オプション)をデザインしておくことが求められます。
「指導と評価の一体化」とUDL
さらに講義では、現場でよく質問される「指導と評価の一体化」とUDLについても簡潔に説明されました。
指導と評価の一体化:何を教えるか(指導)から考えるのではなく、まず「どこまで行ってもらうか(目標)」と「どうやって見取るか(評価)」を先に決め、それに一貫した指導法をデザインします。
例えば、「コミュニケーション力を育てる」という目標で対話ワークを行っているのに、最終的な評価をペーパーテストだけで行うような「目標と評価のズレ」は、子どもにとって大きなカリキュラムのバリアになります。
明日から実践できる!UDLのファーストステップ
講座では、先生方が自身の授業でバリアを取り除くためのヒントが紹介されました。
💡 UDLの実践のために抑えておくべきこと
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✔
「子どものできない」を「カリキュラムの障害」と捉え直す
(手が止まっている子を見たら、「指示の長さ」や「教材の提示方法」にバリアがなかったか振り返る) -
✔
学びの「オプション」を用意する
(「聞く」だけでなく「見る(図や動画)」「読む」、「書く」だけでなく「選ぶ」「イラストで表す」など、インプットとアウトプットの選択肢を増やす) -
✔
振り返りが形式的になっていないかを見直す
(毎時間「楽しかった」と書くだけの形式的な振り返りになっていないか。目標と結びついた振り返りの仕組みを整える) -
✔
自分自身のバイアス(思い込み)に気づく
(「普通はこうするべき」という思い込みが、子どもたちのバリアになっていないか問い直す)
受講者コメント
今回の講座について、補助員を務めていただいた先生から以下の感想が寄せられました。
今回は、北海道教育大学の川俣智路教授と早稲田大学教授の髙橋あつ子先生が担当するという、なんとも贅沢なベーシック講座です。
Universal Design for Learning の名が示すとおり、UDLとは学級にいる多様な子について、その子自身が学習者エージェンシー(学習者による学びの舵取り)になるために支援する、概念フレームワークです。
本講座では、UDLの基本的な考え方から教科における実践例まで、非常に分かりやすく説明されています。また、指導と評価の一体化という点などについても、言及しています。
ぜひ本講座のアーカイブ配信を複数回見直すことを通して、先生方御自身の指導・支援のバイアスに気付き、カリキュラムのバリアを取り除きながら、UDL実践における個別最適化を進めていきましょう。そして、児童生徒の考え方を生かす学びの実現に向けて、授業実践を積み上げていこうではありませんか。
青森市 石川 慎哉
この感想にもあるように、UDLは単なる指導技術ではありません。
教師自身の「ものの見方(バイアス)」を問い直し、すべての学習者が主体性を発揮して学べる環境を整えるための強力なフレームワークです。
※「UDL(学習者中心の授業作り)」のレポートをAI音声でもお楽しみいただけます!



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