「子どもや保護者の対応が複雑化している気がする」
「世界の生徒指導ってどんな感じなんだろう?」
AISESのホームページをご覧いただいている方の中には、生徒指導や教育相談の最新情報を知りたいと思っている方も多いと思います。
そこで、今回は2022年3月19日(土)から21日(月)の3日間の日程で,『教職員交流を通じた国際比較事業シンポジウム2022』が行われました。
その中で、香港教育局のBrian先生をはじめとする香港の教育を牽引する先生たちに,香港における生徒指導について,そのポリシーや実践についてのお話を聞かせていただきましたので、ご報告いたします!
生徒指導の最先端がココに!
台湾,韓国,シンガポール,そして香港のような,アジアの生徒指導・教育相談の先進国では,日本とはまったく違うやり方で子ども達の成長のための教育実践が行われています。
まったく違うってどう違うの?
日本よりアジアの他の国の方が先進国??
と,思われているかもしれませんね。確かに,“日本は先進国で,教育においても当然そうだろう”と思われている人も多いと思います。私もそう思っていました。
でも,実際には日本の教育,とりわけ生徒指導・教育相談に関しては,完全に遅れていると言わざるを得ないのが現状なんです!!
一体どういうことなんでしょうか??
全人的成長を目指す「包括的生徒指導・教育相談(CSGCA)」
MLAこと,マルチレベルアプローチは,別名「日本版包括的生徒指導プログラム」と言います。
包括的生徒指導とは,英語でComprehensive School Guidance & Counselling Approach(CSGCA)と訳されるもので,1960年代のアメリカで生まれ,その後全世界に広がっていきました。先に述べたアジア各国においても同様です。
今回のシンポジウムは,まさにこのCSGCAがテーマであり,CSGCAに取り組んで20年の香港の先生たちとのディスカッションという形で行われました。(香港の先生たちはオンラインで登壇)
MLAは,このCSGCAをモデルとしながら,日本の文化に合わせて,日本でも取り組みやすいように開発されました。それで,“マルチレベルアプローチ=日本版包括的生徒指導プログラム”ということになります。
従来の日本の生徒指導とMLAとCSGCA
日本における従来の生徒指導は,何か問題があれば対処するという対処療法的なものがほとんどです。
例えば,暴力行為があったから指導する,不登校になったから家庭訪問やカウンセリングを行う,などです。しかも,その不適応状態をなんとか適応状態にしようと悪戦苦闘し,結果,なかなかうまくいかないということも多いのではないでしょうか?
MLAやCSGCAにおける生徒指導の基本原則は,「予防」「開発」「治療」を包括的に行うということです。
つまり,問題が起こる前に,予防的・開発的にアプローチし,それでも問題が起こった場合は,治療的にかかわっていくというイメージです。当然,治療的な関わりにおいても,予防・開発的に取り組んできたことがリンクしていきます。
“川下で溺れる子を救うより,上流で泳ぎ方を教えよう”ということですね。
別の言い方をすれば,とにかく適応させることを第一に考える従来の生徒指導に対して,まずは安定した成長を促すという考え方で臨むのがMLAやCSGCAであると言えます。
また,CSGCAでは,子どものニーズに応じて支援の対象を3層に分けて支援していくのに対して,MLAでは,集団全体に対して「自分でできる力」を育てる1次的生徒指導,子どもたち同士のつながりや支え合いで子どもたちを育てる2次的生徒指導,大人が集中的に関わる3次的生徒指導というように,指導行動によって3層に分けているのが大きな違いになります。
日本では,学級経営を中心に,担任の先生と子どもたち,子どもたち同士の集団という“つながり”を大切に学校教育を進めてきました。これは,間違いなく日本の強みと言えるでしょう。MLAは,この強みを活かした形で開発されているのです。(ほんとによく考えられた最高の生徒指導プログラムですよね!)
え?そんなに!?香港の教員研修
今回のシンポジウムでの1番の驚きは,CSCGAを推進していくためのリーダーとなる先生(ガイダンスティーチャー)の養成プログラムについてです。
CSCGAにしてもMLAにしても,非常に優れた生徒指導プログラムであり,それほどいいものなら,日本でもすべての学校で取り組めばいいと思うのですが,実際にはなかなかそうはなりません。
なぜか!?
それは,この新しい生徒指導プログラムを学び,実践につなげていくための教員研修の量に秘密がありました。
今回お話ししていただいた香港では,小中学校の教員を対象とした生徒指導に関する研修が,なんと年間100時間以上行われています。
しかも,これは単なるベーシックラインで,そこからのより深い学びこそが本番だというのです。(そりゃあ,日本は遅れてる…と,あせる気持ちになりますよね)
日本で,市をあげてのMLA実践をかれこれ10年間行ってきた岡山県総社市でも,年間30時間から57時間の,全体研修やリーダー研修,管理職研修を行ってきました。
香港の先生たちも,栗原先生も,皆さん声をそろえて研修の重要性を語ります。
さて,どうすればこれだけの研修を実施し,包括的生徒指導を日本に根付かせることができるのでしょうか?
全国の仲間と力を合わせて
今回のシンポジウムには,北海道から沖縄まで,日本全国から日本の生徒指導・教育相談を変えていこう!日本の教育をよくしよう!子どもたちと明るい未来を創造しよう!という仲間が集まりました。
「日本の包括的生徒指導はまだまだ萌芽期」だと,栗原先生は言います。
しかし,その芽は確実に育ってきていることを,今回の3日間のシンポジウムを通じて感じることができました。全国には,MLAを広めようと実践に取り組んでいる仲間がたくさんいるのです。
そんな仲間とつながって,協力しあって,それこそ包括的に取り組んでいくことで,近い将来,日本の生徒指導・教育相談はガラッと変わることでしょう!
このブログを読んでいただいているそこのあなたもその一員です。
さて,今回のブログでは,シンポジウムでの学びや気づきのほんの一部分しかお伝えできませんでした。本当は,皆さんに知っていただきたいことがまだまだあります。
なので,今後,今回のシンポジウムの内容は,AISESを通じて公開していく予定です。公開された折には,ぜひご覧いただければと思いますので,ご期待ください☆彡
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