2022年度から生徒指導の進め方が大きく変わります-代表理事が生徒指導提要の改訂の委員に選任されました-

概要(2019年9月時点)

日本の生徒指導の方向性が2022年度から大きく変わることになりました。

日本の教科教育は、基本的には学習指導要領に基づいて行われています。
では、生徒指導は何に基づいて行われているかご存知でしょうか?

正解は生徒指導提要です。
ただ、この生徒指導提要は学習指導要領に比べて知名度が非常に低いですよね。
ですので、読んだことのない方や、「そんなものがあるのか」と思われた方もいらっしゃるのではないかと思います。
それはある意味普通なので、「しまった、知らなかった!」とか思わなくても大丈夫です。

もっとも学校の生徒指導や、教育委員会や教育センター等が開催する研修会はこの考え方に則って進められています(いるはず?)ので、生徒指導提要を読んだことがなくても、その中身については多少は体験していたり聞いたりしているはずです。

現行の生徒指導提要は2010年に作成されました。
内容についてはかなり評価が高く、現在でも十分通用する部分がほとんどなのですが、残念なところもあります。
たとえば辞書のように分厚くて、しかも太字も下線もないので、読みにくかったり、デジタル版のように検索を掛けるといったこともできません。
また、以来11年が経ち、修正するべき点も生じてきたため今回の改訂となったわけです。

私の個人的なFacebookには少し書いておきましたが、栗原は今回、この改訂に携わる24人のメンバーに選任されました。
というわけで、日本の子供たちに必要な事は何かを考えて頑張りたいと思っています。

生徒指導提要が改訂されるまでの流れ

2019年9月に文科省に呼ばれて実は生徒指導提要を変えようと思っているので意見を聞きたいとの事でした。
2020年1月に「魅力ある学校づくり検討チーム」が開かれたのですが、この時のチームの委員となって欲しいと依頼がありました。
2020年8月に話をして、9月にまとまった内容がこのように報告されました。

「魅力ある学校づくり検討チーム」報告(2020.9)

  • 近年、生徒指導上の課題は深刻化
  • 子供たちが楽しく通える魅力ある学校をつくっていくためには、
    学校全体での取り組みが必要
  • 事案発生後の適切な対応のみならず、
    全ての子供たちが安心して学校に通えるよう、いじめ等を未然に防止
  • 自己肯定感の向上人間関係づくり、多様な児童生徒の状況に対応した支援・指導体制の確立等について検討する必要
  • 生徒指導提要の改訂

近年生徒指導上の課題は深刻化している。
なので、子供たちが楽しく通える魅力ある学校をつくるんだということ。

そのためには学校全体である必要があるという事です。
また、事案発生後の対応だけではなく、全ての子どもたちが安心して学校に通えるように(いじめの)未然防止が大事だということです。

私は、いじめアンケートは予防的な取り組みだと言うけどあれは嘘だと言っています。これは文科省の人にも言ったのですが、いじめアンケートはいじめが起こってるからいじめがありますと答えているので予防してない。
早期発見はしているかもしれないけど予防しているのではないではないかという話をしました。

だから未然防止というのはもっと手を打っていかないといけないと。

早く発見すると言っても1カ月1回だったら1カ月間いじめられているかもしれません。
それは早期発見であって、決して未然防止じゃないという話をしました。

ではそのためには何が必要かというと自己肯定感を改善したり人間関係づくりなどをしないといけない。
それをやるためには新しい生徒指導提要を作る必要があるという事です。

こういう流れの中で生徒指導提要の会議が開かれています。

生徒指導提要の方向性のポイント3つ

第一回目の会議(2021年7月)

生徒指導提要の方向性

  • 1)「積極的な生徒指導」の充実

    目前の問題に対応するといった課題解決的な指導だけではなく、「成長を促す指導」等の「積極的な生徒指導」を充実
  • 2)個別の重要課題を取り巻く関連法規等の変化の反映

  • 3)新学習指導要領やチーム学校等の考え方の反映

    • 生徒(児童)の発達の支援
    • チームとしての学校
    • 学校における働き方改革
    • 多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導
    • 生徒指導上の課題に関するデータの活用(GIGA端末の活用含む)等

この時に3つのポイントでやりますという方向性が出てきました。

1つめが【積極的な生徒指導】
課題解決的な指導だけじゃなくて成長を促す指導等の積極的な生徒を充実させるということです。
これは実はAISESが設立の当時から言い続けてきたことです。
免許更新講習や、会員サイトにアップされている動画は全てこの考え方に基づいています。
やっとこういう考え方が主流になるのかと思うと感慨深いものがあります。

2番目は【個別重要課題を取り巻く関連法】
これはこの12年ぐらいの間に法律がどんどん新しくなっていますので整合性を取るっていう話なのでこれは当然かなっていう感じはします。

3番目は【チーム学校】
学習指導要領が変わってるしチーム学校っていうのが特に後半出てきたのでこれを使って積極的な生徒指導を進めていくという形で新しい生徒指導提要を作り直す。
実はこのチーム学校という方向性を決める会議が数年前から何回も持たれていて、私自身もその会議に呼ばれて、意見を述べました。
また、その会議には私の講演の中でも何度もお話ししている総社市の総社西中学校が呼ばれて、実践を発表しています。
つまり、チーム学校のモデルの一つが総社西中学校ということですね。
このようにチーム学校も、実はAISESが提唱してきたものなのです。

生徒指導提要の大きく変わった点

この様な内容で生徒指導提要をマイナーチェンジして、2022年からスタートさせる予定でしたが参加者のさまざまな意見が出る中、この様に変化しました。

新しい生徒指導提要の特徴(独断ですが)

全体

  • 課題解決志向から発達指示志向へ
  • 臨床志向から教育志向へ

第一部

  • 抜本的な改訂
  • 2軸3類4層の生徒指導・教育相談
  • チーム学校・・・生徒指導・教育相談・特別支援の一本化

第二部(4章以下)

  • 全部を読むことを想定せず、必要な部分を読むことを前提化

デジタルテキスト化

  • 容易な検索・関連資料をリンク化・今後の随時改訂を視野に

課題解決志向から発達支持的な方向に大きく変わったのと 心理臨床というよりは学校教育っていう方向に大きく舵を切りました。 結果として抜本的な改訂になって 多分初めて聞いた言葉だと思うんですけど2軸3類4層の生徒指導教育相談っていうのが出てきました。 これは後でちょっとご紹介します。

また、今までの生徒指導の体制は
生徒指導の進め方
教育相談の考え方進め方
特別支援特別生の考え方進め方という個別の感じでした。
そういう時代じゃないんじゃないかと言いました。
生徒指導的なニーズの子と教育相談的なニーズの子の様にわけてるからいつまで経っても現場もそういう体制になってるんじゃないですかと。
例えば生徒指導的なニーズがある子供が実は心のケアが必要だったり、特別支援的なニーズを持っていたりってことは現場じゃ当たり前じゃないですかと。
なのに何で生徒指導提要はそれが分かれてるんですか?それおかしいんじゃないですか?と質問しました。
一体となってやっていくような方向性を出していくべきだと意見を述べました。

そう言ったなか、「生徒指導・教育相談・特別支援の一体化」が出て来ました。

特徴としては全部で300何ページもあります。膨大です。
どういうふうにしようかって話になったんですけど、例えば不登校への対応も、いじめへの対応も暴力行為の対応も重なる部分がいっぱいあります。

発達指示的なことでいったら、皆同じのでやらなきゃいけないわけなんですけど共通項を抜かないことにしようと。
いじめはいじめの章だけ見ればいじめは全部分かるみたいに、不登校は不登校の章を見れば全部分かる
全部読むことを想定しないで必要なところ
例えばいじめの問題が起こったら
いじめの章を読めば発達指示的なところから課題対応まで全部わかるようにしました。
なので結果としてダブりがすごく多くなりました。

もうひとつ大きいのがデジタルテキスト化で、例えば学習指導要領のそこをクリックすると学習指導要領のページに飛ぶとか子供の権利条約をクリックすると子供の権利条約に飛ぶとかそういうような形にしています。

時代の変化も早いんで5年とか10年に1度改訂しているとちょっと間に合わないという話が出てて2~3年ごとにマイナーチェンジしていけるようなものにしようというんでデジタルテキスト化ということを考えています。

新しい考え方「2軸3類4層」とは?

生徒指導の分類

これが昔の発達支持的、課題予防的、困難課題対応とか言ってたんですけど 早期発見は予防じゃないですよそれは問題起こってますよねって。言ったんです。
未然防止というのは問題が起こらないようにするわけだから。
特に自殺なんかの場合はちょっとでもやっちゃったらもう終わりでしょと。
いじめだって初めは程度が弱くてとかいうこともあるかもしれないけど自殺なんていうのはもう未然防止しなきゃだめなんですよ。
早期発見じゃどうにもならないですよね。
「課題予防的な生徒指導」の中には早期発見対応的な予防と課題未然防止があるはずだと。

3類(発達支持的生徒指導、課題予防的生徒指導、困難課題対応的生徒指導)は
4層(発達支持的生徒指導、課題未然防止教育、課題早期発見対応、困難課題対応的生徒指導)に分かれる

ピンク側(即応的、継続的)がリアクティブ
反応してやる。
ブルー側(状態的、先行的)がプロアクティブ
日常的っていう意味ですよね
問題が起こるのに先行してやりましょうというのがプロアクティブに分かれるという事です。

それをこんな風に

軸は子供の問題の程度
それから反応的かあるいは先行的かっていう2軸があって2軸3類4層っていうふうに今回なりました。

とにかくここを大事にしましょうってことが相当前面に出ています。

これからの生徒指導(新「生徒指導提要」案より)

  • 従来の生徒指導は、課題が起き始めたことを認知したらすぐに対応する(即応的)、あるいは、困難な課題に対して組織的に粘り強く取り組む(継続的)というイメージが強いと思います。
  • いじめ重大事態や暴力行為の増加、自殺の増加などの喫緊の課題に対して、起きてからどう対応するかという以上に、どうすれば起きないようになるかという点に注力することが大切です。
  • 今後、発達支持的生徒指導や課題予防的生徒指導(課題未然防止教育)の在り方を改善していくことが、諸課題の未然防止や再発防止にもつながります。・・・その意味からも、これからの生徒指導では常態的・先行的(プロアクティブ)な生徒指導の創意・工夫が必要だと言えます。

従来の生徒指導は課題が起き始めたことを認知したらすぐに対応する。
あるいは困難な課題に対して組織的に粘り強く取り組むというイメージが強いと思います。
だけどいじめの重大事態暴力行為とか自殺などの問題が起きてからどう対応するのかっていうことじゃなくてどうすればそういう問題が起こらないようになるのかということに注力することが大事ですよね。

今後発達支持的生徒指導や課題予防的生徒指導(課題未然防止教育)そのあり方を改善していくことが諸課題の未然防止や再発防止にもつながります。その意味からもこれからの生徒指導では常態的先行的な生徒指導の創意工夫が必要だと言えます。

これが新しい生徒指導提要の大きな方向性です。
リアクティブな生徒指導とか教育相談が要らないって言ってるわけじゃ全然ないですよね。
生徒指導をちゃんとやっていく。プロアクティブな生徒指導が大事だということですね。

包括的プログラムという考え方
十分な発達支援を土台として適応支援を行う

包括的プログラムという考え方

発達支援がしっかりしてれば適応支援はそんなに要らない。

だけど今の時代はこの発達が
いろんな理由でうまくいかなくなっちゃっててだんだん地盤沈下したりデコボコができてきてそうすると先生方は齢相応に何とかするためには適応支援を手厚くしなくちゃいけないっていう現実があってこれの対応であっぷあっぷしてるっていうことがあるんじゃないですかっていうことをずっとAisesは言い続けてきているわけですがまさにそういう感じ。

国の方向性としてこういう子の発達支援っていうのを生徒指導提要の言葉でいうと発達指示的生徒指導発達指示的教育相談を入れていきましょう。

最後の7月の会議の時にそれをチームでやっていきましょうと僕の方でこれ発言しました。

それだけだと弱いと。
アメリカだとガイダンスカリキュラムとかガイダンスプログラムっていう言葉が入っていて具体的にこういうことっていうのが示される。
だからそれが大事だと言っても何すればいいか全く示されてなかったらそれは進んでいかないですよねと。

だから例示をするべきだと。

どういうガイダンスカリキュラムをするのかとかどんなふうにするのかみたいなことをやっていくことが必要だっていうことですね。

アイセスでは実践的なガイダンスカリキュラムをご用意しています。
ぜひ、内容をご覧ください。

日本の生徒指導の方向性が2022年度から大きく変わることになりました。

日本の教科教育は、基本的には学習指導要領に基づいて行われています。
では、生徒指導は何に基づいて行われているかご存知でしょうか?

正解は生徒指導提要です。
ただ、この生徒指導提要は学習指導要領に比べて知名度が非常に低いですよね。
ですので、読んだことのない方や、「そんなものがあるのか」と思われた方もいらっしゃるのではないかと思います。
それはある意味普通なので、「しまった、知らなかった!」とか思わなくても大丈夫です。

もっとも学校の生徒指導や、教育委員会や教育センター等が開催する研修会はこの考え方に則って進められています(いるはず?)ので、生徒指導提要を読んだことがなくても、その中身については多少は体験していたり聞いたりしているはずです。

現行の生徒指導提要は2010年に作成されました。
内容についてはかなり評価が高く、現在でも十分通用する部分がほとんどなのですが、残念なところもあります。
たとえば辞書のように分厚くて、しかも太字も下線もないので、読みにくかったり、デジタル版のように検索を掛けるといったこともできません。
また、以来11年が経ち、修正するべき点も生じてきたため今回の改訂となったわけです。

私の個人的なFacebookには少し書いておきましたが、栗原は今回、この改訂に携わる24人のメンバーに選任されました。
というわけで、日本の子供たちに必要な事は何かを考えて頑張りたいと思っています。

さて今回の改定の基本方針は大きく3つあります。

まず第一は、「積極的な生徒指導」の充実です。
具体的には、目前の問題に対応するといった課題解決的な指導だけではなく、「成長を促す指導」等の「積極的な生徒指導」を充実するということです。
これは実はAISESが設立の当時から言い続けてきたことです。
免許更新講習や、会員サイトにアップされている動画は全てこの考え方に基づいています。
やっとこういう考え方が主流になるのかと思うと感慨深いものがあります。

第二に、「個別の重要課題を取り巻く関連法規等の変化の反映」です。
2010年以来多くの法律等が制定されていますので、そうしたものを反映し整合性を取るということです。
これは当然と言えば当然ですね。

第三に、「新学習指導要領やチーム学校等の考え方の反映」です。
この下位項目の一番目には、「生徒(児童)の発達の支援」ということが述べられているのですが、その具体は、学級づくりに関連するような内容や、学習指導との関連で生徒指導を行うということが書かれています。
これもAISESがずっと主張してきた「個が育つ学級集団・学習集団作り」とイコールです。
そして下位項目の二番目には、「チームとしての学校」と言うことが述べられています。
実はこのチーム学校という方向性を決める会議が数年前から何回も持たれていて、私自身もその会議に呼ばれて、意見を述べました。
また、その会議には私の講演の中でも何度もお話ししている総社市の総社西中学校が呼ばれて、実践を発表しています。
つまり、チーム学校のモデルの一つが総社西中学校ということですね。
このようにチーム学校も、実はAISESが提唱してきたものなのです。

その他にもいくつかのことが描かれていますが大きな方針は以上です。
中核となる考え方は、「すべての子供たちの成長支援と適応支援をチーム学校で行う、とりわけこれまであまり重視されてこなかった成長支援に焦点を当てる」ということが、今回の改訂のポイントかと思います。

2021年度末には改定が終了し2022年度からはおそらくこの方向性で生徒指導が進むことと思います。

上でも述べたように、こうした方向性はすでにAISESが設立当初から実施し、すでに総社市や石巻市で成果を上げてきた方向です。
いよいよ時代が私たちの考えていた方向に進んできたと思っています。

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