不調のSOSをキャッチし、チームで支える実践アプローチ〜(9/5開催報告)子どものメンタルヘルス講座

教職員向けに開催された講座「子どものメンタルヘルス」の内容をまとめたレポートをお届けします。
近年、子どもを取り巻く環境の変化に伴い、不登校やいじめ、メンタルの不調を抱える子どもが増加傾向にあります。
今回は、子どものメンタルヘルスの特徴から、初期サインの発見、心を育てる土台作り、そして学校組織での関わり方まで、講義の実践的なポイントを整理しました。

子どものメンタルヘルスとは?(大人との違い)

メンタルヘルスとは、単に「病気や診断名がない状態」だけを指すのではありません。自分の心身の状態を子どもなりに理解して対処できること、身近な人と安心して生活し、困ったときには大人へ ヘルプ(支援要請) が出せる状態が極めて重要です。
子ども理解において押さえるべき「3つの視点」があります。

  • 発達(発達段階):小学生(7歳)から高校生(18歳)までの期間は、心身が目まぐるしく変化・成長します 。発達段階に応じてストレスに感じる内容や表出方法も変わります 。
  • 関係性:家庭や学校だけでなく、部活動、地域活動、サークルなど、どのような関係性の中で生活しているかを把握する必要があります 。
  • 表現(表出):年齢が低い子どもほど、自分の心身の状態を言葉で表す力(語彙や経験)が弱いため、「お腹が痛い」「学校に行きたくない」といった直接的・身体的な言葉でしか表現できない特徴があります 。

子どもが出すSOS(初期サイン)の捉え方

子どもが見せる問題行動や身体の不調は、自力で解決できない状況や困り感に対するSOSサインです。
3つの領域から変化を観察する!変化をいち早く察知するために、「体」「行動」「心」の3つの領域に注目します。

  • 体:腹痛、頭痛、発熱、睡眠障害など 。ストレスが身体症状として表れる身体表現性障害や、自律神経の乱れによる起立性調節障害なども含まれます 。
  • 行動:遅刻・欠席の増加、保健室の頻繁な利用、イライラ、友人への暴力、学習意欲の低下、自傷行為など 。
  • 心:気分の落ち込みや不安 。いつもニコニコして明るくごまかしてしまう子どももいるため、一番見つけにくい領域でもあります 。

多面的なアセスメントと除外診断
サインをキャッチする際は、「一つの症状だけに執着しない」ことや、「いつもと違う変化」を継続的に把握することが不可欠です。また、身体の不調を訴える場合は、気持ちの問題と決めつけず、まずは医学的な検査(除外診断)で重篤な身体疾患の有無を確認し、身体・発達特性・人間関係・家庭環境などを多面的にアセスメントすることが求められます 。

心の土台を育てる(予防的アプローチ)

不調を予防し、心の健全な発達を促すためには、日頃から「心の土台」を耕す関わり(発達支持的な関わり)が有効です。

  • 自尊感情(「私は私でいい」):他者と比較するのではなく、「以前のその子」からの変化や成長を評価する(足し算の関わり)ことや、失敗しても否定されない安心感のある環境が土台となります。
  • 自己有用感(「誰かの役に立っている」):係活動や委員会、共同学習などを通じて、「自分はクラスやコミュニティに必要な存在だ」という感覚を育みます。
  • 自己効力感(「私ならできる」):スモールステップで成功体験を重ねるだけでなく、失敗したときにどのように工夫して乗り越えたか(立ち直った経験)を振り返らせることが、しなやかな効力感を生みます。
  • レジリエンス(復活力):1人で完璧に乗り越えることを目指すのではなく、「周囲の大人や友達に助けてもらいながら乗り越える力」を身につけさせます。

教員・学校組織としての関わり方

子どもの不調に対処する際、大人は行動を「正す」ことよりも、まず「理解する」姿勢が大切です。
「つなぐ」意識を持った関わりが大切です。

  • 気づく:いつもと違う変化にいち早く気づきます。
  • 受け止める:子どもが使った言葉を尊重し、否定せずに受け止めてフィードバックします。
  • 聴く・尋ねる:「何が起こったの?」と行動の背景や想いを丁寧に聞きます。
  • 一緒に考える:一方的に指導するのではなく、どうすればよいかを子どもと一緒に考えます。
  • つなぐ:校内・校外の連携へつなげます。

1人で抱え込まない「チーム支援」
学級担任1人が全てを抱え込む必要はありません 。養護教諭や特別支援担当をはじめ、家庭や医療・福祉・心理などの専門機関と連携し、校内外の資源を活用した「チーム支援」を行うことが、早期回復と教員の負担軽減につながります。

受講者の声

今回の講座を通した視点は、「予防だけでなく、回復も含めて考える」ということでした。発達途中の児童・生徒を、学校として支えることの大切さを軸に、講義と事例検討を行いました。
学級担任が1人で抱え込むことのないよう、「(子ども)『本人の安全』と『必要な支援につなぐこと』を最優先」にしながら、学校内外の資源を巻き込んだ組織的な対応が必要だと、私自身改めて痛感した次第です。
私のこれまでの教職の経験上、小学校の早い段階からメンタルヘルスに不調を訴える子がいます。中学校や高等学校では更にその蓄積が進み、場合によっては深刻な問題に発展する事案もあります。そこで、校種を問わずぜひ多くの先生方に本講座を受講してほしいと、強く願います。
また、個人情報保護の観点から、アーカイブ動画ではカットになる箇所があります。内容は実に実践的な話題でした。次回以降、もし御都合がつくようであれば、カットがないリアルタイムでの受講をぜひおすすめします。目の前の子どもを救う方法について、一緒に学んでみませんか。


『AISES 学校教育開発研究所』は子どもと学校の支援、教育に携わる人材育成を行うことを目的とした団体です。eラーニングや直接研修などを通して、発達障害支援を含む学校教育現場の様々な課題に対応する理論・実践例・教材・教具等を提供します。

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