教育現場で「エビデンス」や「データ活用」という言葉を聞かない日はありません。
しかし、アンケートを取ったものの分析ができずに終わったり、流布している情報を鵜呑みにしてしまったりすることはないでしょうか。そこで重要になるのが、 「リサーチリテラシー」 というスキルです。
リサーチリテラシーの定義:単なる「検索力」ではない
リサーチリテラシーとは、一般的に「研究を遂行するために必要な基礎的能力」を指します。しかし、単に情報を探す能力(検索力)だけを指すのではありません。
より厳密には「取得した情報を適切に評価・解釈し、活用する能力」や、「社会調査データを解読し、その信頼性や妥当性を検討する能力」と定義されています。つまり、目の前にある数字や情報を「ただの数字」で終わらせず、その背景にある意味を読み解く力のことです。
リサーチリテラシーを構成する「8つの力」
具体的にどのような能力が必要なのか、ミネルヴァ書房の『大学生のためのリサーチリテラシー入門』では、以下の「8つの力」を提唱しています。
教員向けの講座では、特に「精度の高い項目作成(アンケート設計)」や「迷わないデータ管理」といった、実務に直結する思考力が重視されています。
なぜ今、注目されるのか?
「リサーチリテラシー」という文言が強調される背景には、現代特有の課題があります。
「ムードの言葉」への警鐘: メディアを通じて流布する「日本の子どもの学力低下」や「幸福度の低さ」といった言説は、時に単純化され、厳密な学問的裏付けを欠いた「ムードの言葉」である場合があります。リサーチリテラシーは、こうした情報を鵜呑みにせず、客観的な根拠(エビデンス)の妥当性を自ら検証するための武器になります。
生成AI時代の「検証リテラシー」: 生成AIの普及により、もっともらしい誤情報(フェイクニュース)が拡散されやすい現代では、「情報を探す時代」から「情報の根拠を検証する時代」へとシフトしています。AIが出した回答の出典や一次情報を確認し、「現実世界との接点」を人間が判断することこそが、これからのリサーチリテラシーの核心と言えます。
教員にとってのリサーチリテラシー
教員にとってこの能力を身につけることは、単なる事務スキルの向上ではありません。 データを正しく扱うことで、「教育の質」を客観的に読み解き、自身の教育実践に揺るがない根拠を持たせることができるようになります。
具体的には,アセスやB-SAFEを自分の解釈で読み取る力や,客観的なデータに基づいた効果測定を念頭に置いた授業計画の立案力を養うことにつながります。
アセスやB-SAFEにおいても、「とりあえずアンケート」で終わらせず、データの裏側にある子どもたちの実態を正しく捉えるために、正しくデータを取り扱えるようになること。数値に振り回されることなく、子どもたちを観察する力と合わせて見立てていくこと。リサーチリテラシーは、これからの教師にとって「一生モノの思考力」となるはずです。また、研究授業や公開授業を担当する際には、授業目標に対する達成度や実践前後の効果測定をするために抑えるべき点について自分で考える力を高めることができます。これは、教員の「自律的に成長し続ける力」のベースとなるものです。
また、真偽が不確かな情報に接することは不安感を高めることにつながります。自らアセスやB-SAFEを読み解けることや授業実践の効果を自分で確かめられることは、教員としての仕事に対する不安感の低減につながります。
つまり、真偽が不確かな情報に流されることなく、アセスやB-SAFEのデータを自分で読み解き、授業実践の効果を自分で確認することは、これからの教員にとって安心して仕事を続けるためには不可欠な力であるとも考えられます。



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