みなさんこんにちは、山崎茜です。
ここまで非常に軽快・明快に米田先生がMLAを進めてきた軌跡を書かれていますね。
今回から数回に1度、そんな大阪でのMLAの広がりの「裏話」、つまり研修をしてきた側は何を思い、どう関わってきたのかをお話ししたいと思います!
山崎 茜

広島大学大学院教育学研究科博士後期課程修了後、広島大学大学院教育学研究科附属教育実践総合センター客員准教授を経て、現職。
学校心理士、広島市・総社市スクールカウンセラー。
教育心理学を専門に、友人関係や愛着の発達をテーマに研究を展開。
東広島市や企業などと共同し,不登校や子育て支援の社会実装を目指した取り組みにも参画している。
全国で教員研修や講演活動を行い、包括的生徒指導や教育相談の普及に尽力している。
主な著書に『愛着関係の発達の理論と支援』(共著・金子書房)、『はじめて学ぶ生徒指導・進路指導』(共著・ミネルヴァ書房)がある。
主な論文に「愛着に課題のある子どもを育て直す「チーム学校」の可能性−子どもの愛着に関する研究の動向と課題から−」(学習開発学研究)等がある。
(※本記事は2021年7月28日に執筆・公開したものを当時のままご案内しております。)
始まりは一本の電話から・・・・
2013年の初夏、のんびり家で過ごしていた私に、栗原先生から一本の電話がかかってきました。
「おう、あかねか?元気か?そっかそっか、あかねさ、今少し働ける時間あるか?」
師匠からの電話です。
返事は、はいか、Yesかしかありません。
「はい、まぁ働く内容によりますけど、何ですか?何かの分析とか?」
「いや、そうじゃなくってな、あかね、大阪市の中学校に入ることになったから。俺に話きたんだけど、行けないから関西にいる弟子に行かせますって言ってな。最近大阪大変じゃん?それで、生徒指導改革みたいなことやりたいらしくてな、おまえちょっと行って、学校と共同してやってみろ。くわしいことはその学校の校長先生から連絡あると思うわ、じゃあよろしくな。」
え?入ることに「なったから」ってなに?入るの?え?大阪の中学校に?
驚きと戸惑いが襲ってきます。
でも、大阪の学校現場で先生方と共に、生徒指導を変えていく・・・すぐに「面白そう、ワクワクする!」という感覚も湧き上がってきました。
二本目の電話で語られたこと
そうこうしているうちに早速、当時その学校の校長だった名田正廣先生から、大阪市の現状、学校で行っている生徒指導への危機感、どんなことを研修したいかについてご連絡がありました。
そのお電話で、大阪では「人情と情熱で」子どもと対峙する先生方が多く、これまではそれでやってこれた状況があったこと、一方で、年々生徒指導がそのスタイルでは難しくなってきており、桜宮の事件以降その危機感が強くなっていることを伺いました。
そして、8月末の夏休み明け直前に初回の研修、以降、年度内に全4回研修をすることに。
一度、ワクワクする、と思った研修ですが、4回で何を扱うかも含めて、これは戦略的に進めなければいけないな・・・と思うと、本当にできるのだろうか・・・とまた戸惑いを感じました。
初回研修で何をするか?
そこで、まずは子どもたちの見せる様々な問題行動や状況は、何かのサインであること、そして反対に、そうしたサインを「出せずに」苦しんでいる子どももいる。
「人情や情熱」を感じ取れなかったり、素直に受け取ったりサインを出したりするだけの対人関係力が育っていなかったりする子どもたちが多くなっているという実態に併せて、子ども理解に基づいた生徒指導を展開する。
まず、このことを理解していただくことが必要だと思い、初回の研修をアセスメントと、MLAの概略に設定しました。
「理論と実践をつなぐアプローチ」と言うけれど・・・
2010年から始まった総社市でのMLAの実践と、それに関わる海外視察、そこでの繋がりをもとにした国際生徒指導シンポジウムの開催の中で、学校を変えていくには「ミドルリーダー」の働きとその育成研修が重要であることがわかっていました。
今回で言えば、生徒指導主事や研究主任などになるでしょうか。
それらの先生方が研修の内容や取り組みの意義を理解し、主体的に、そして組織的に動いてくだされば、効果的に実践は回っていく。
私の中には、「理論的には」それが刷り込まれていました。
それまでも、広島県内の学校ではアセスを活用した子ども理解や、MLAの概略について研修をさせていただくことがありました。
でも、(ギリギリ)20代の「オネエチャン」が研修講師として来るのですから、研修に参加されるベテランの(特に「生徒指導っぽい」)先生は、脚を組み、椅子にもたれかかって研修を受けられる方もおられました。
要するに、「なめられている」わけですね。
その頃の私はひたすら、「どうすればそういう先生方を前のめりにできるか」を考えて研修を行っていました。
「力のある」先生を納得させ、学校を動かすには何が要るか?
そうした拙い経験の中で導き出した答えは、「圧倒的な専門性」を持ち、「理論を実態に結びつけた話」をしながら、参加者の先生方に「自分たちで話してもらう時間をなるべく取る」ということでした。
ただ、その頃は私自身の専門性はまだ発展途上です。
加えて、学生時代の困難校での支援員や非常勤程度でしか子どもと関わる機会のなかった私は、実践的な話となるとかなり未熟であったように思います。
少ない事例の中から捻り出したり、小学校教員である母から聞いた事例を引き合いに出すなどしてなんとかごまかしていたものの、自分の中でも何かまだ「落ちていない」感覚もあり、先生方にとっても、十分な説得力のある話はできていませんでした。
広島でさえそうなのですから、いわんや困難さ極まる大阪をや!!頭の中で「大阪の生徒指導の先生」を想定し、その人達を納得させるためにはどんな話をすれば良いか、資料作りに時間をかけ、研修で何を話すか、ずっとイメージトレーニングしていました。
いよいよ初回研修!そこで出会ったのは・・・・
そんな完全戦闘態勢のまま迎えた初回研修。新大阪駅からすぐの地下鉄の駅口に迎えにきてくださったのは、優しいお顔立ちですが大柄の名田校長先生。
そして、案内された学校で名田先生から「こいつに色々勉強させてやっていこうと思ってます」と、紹介されたのが、米田先生でした。
「こんにちは、米田と言います、よろしくお願いします。(キリッ、シャキーン)」そう挨拶された米田先生からはそれこそ、「大学からきた研修講師と言ったってこんなオネエチャンかよ」「これまでの力で押す生徒指導で何があかんねん」というオーラに溢れていました。
(さすが大阪の「ザ・生徒指導」な人きた・・・めっちゃ怖い・・・)と思いつつ、こういう先生達を納得させる話ができなければダメなんだ、と、気を引き締めて初回研修に臨んだのでした。
(※本記事は2021年7月28日に執筆・公開したものを当時のままご案内しております。)
【第2回はこちら】
【第2回】とりあえずやってみる-協同学習にチャレンジ
【第4回はこちら】
【第4回】総社市「だれもが行きたくなる学校づくり研修会」に参加して



LINEに追加する