報告: 7月19日開講アセスコーディネーター講座

みなさん,こんにちは。
元小学校教員で,現在は大学で教員養成課程の学生や院生とともに学んでいる真田です。

この記事では,教職を経験し,現在後進を育てている立場から,AISESのMLA専門講座を受講し感じたこと,考えたことをみなさんに紹介していきたいと思います。

(開催中のMLA専門講座ラインナップはこちらから👇)

アセスコーディネーター講座

1回目は七月に行われたアセスコーディネーター講座(第1回)です。
以下のような流れで実施されました。

講座の流れ

1.アセスメントとは何か -ゴール設定のためのスタート地点の把握-
2.アセスメントのポイント -理論は実践を導く羅針盤-
3.アセスメントの流れ -データをもとに仮説生成-
4. アセスデータの読み取り 
5.最新web版アセスについて

少人数に限定された研修ということで,講師の栗原先生の説明の合間に,受講者からの疑問を栗原先生が直接答える時間が多く取られていて,疑問を解決しながら研修を受講者自身が進めることができました。

また,講義の合間にグループディスカッションの時間がとられていて,そこで受講者同士で理解の確認をしたり,実際に受講者のアセスのデータをもとに事例検討をしたりしながら研修が進められました。

ここからは,実際に講座内容の一部と感想を紹介します。

アセスメントとは何か -ゴール設定のためのスタート地点の把握-

これまでの学校教育,教育相談,生徒指導では,みんなで統一した基準で指導しましょうというように,ゴールでなくプロセスを統一していました。

みなさんの今の学校はいかがでしょうか。

しかし,スタートもゴールも考えずにプロセスを統一すると,結果的に子どもたちを厳しく指導するしか方法がなくなり,子どもたちに限られた行動を押し付けるということが多く起こるようになります。

でも,本当に統一すべきはプロセスでなく,ゴールのはずです。
そこに至るまでのアプローチは,教員によって違いがあってよいのではないでしょうか。

近年,子どもたちのスタートラインが,私たちが感じている以上に一人一人違うことがわかってきました。
不登校,緘黙,発達障害,いろいろな課題を抱えている子が教室にいることがわかっています。学力だとより考えやすいでしょう。低学力の子もいれば,ギフテッドの子もいます。一人一人のスタートが違うのに,ゴールが同じということはおかしいはずです。だから,一人一人がゴールを設定できるように支援することが大事になってきます。

ただし,スタートがずれているとゴールもプロセスもずれてしまいます。だからスタートの現状理解,つまり児童生徒理解のためのアセスメントが重要になるのです。このスタート地点の把握がアセスメントの第一歩になります。

そんなお話を聞いて,確かに現職のとき,プロセスを学年団や生徒指導部会で話し合うことはあっても,ゴールをしっかりと話し合うことは少なかったことを思い出しました。どうしても,どう指導したら良いかと教師目線で目先の指導方法について打ち合わせをしがちですが,子どもたち一人一人のゴール,そしてそのゴールを見定めるためのスタート地点を把握することの重要性を改めて感じました。教育相談,生徒指導も,やはり「急がば回れ」が大事なんですね。

アセスメントの実際

学校教育の実践の場でよく行なってしまうのが行動に着目してしまうことです。しかし,教師から見える行動は氷山の一角で(氷山モデル),その下には,環境の影響や特性,これまでの経験や学習の影響等,認知や感情といった行動の背景があります。

そのため,子どもたちに効果的な支援を実施する際には,行動にアプローチするのでなく,認知や感情にアプローチすることが大事になります。アセスはまさにそこを測っているので,アセスを実施し丁寧に適切に読み取ることが重要になります。

ちなみにアセスは,COCOLOプラン(文部科学省,2023)に紹介されているアセス以外の多くのアセスメントツールと違って,心理学をベースに標準化された尺度で子ども一人一人の適応,子どもの状態を見ることができます。また,子ども一人一人の状態を見ることで,学級経営の課題が見えてくるのもアセスの特徴です。

アセスのようにアセスメントツールを導入することで,子どもの適応感を測定することは,子どもの適応を考える文化の基盤となるので,目の前の子どもたちだけでなく,実は学校の先生方や学校風土そのものを変える近道となる可能性があります。

そんな話を聞いて,アセスメントツールの活用を知らず,面接と観察だけで何とか子どもたちのことを把握しようと一生懸命もがいていた若手教師の頃を思い出しました。

面接も観察も大事ですが,どちらも教師の主観が入るので,どうしても見落としてしまう子どもたちが出てきてしまいがちです。そんなときにアセスを活用することで,より幅広く,そして適切に子どもたちをアセスメントできるようになったこと,それとともに同僚と子どもたちの状況を話しやすくなったことを今でも覚えています。

もちろん,アセスのようなアセスメントツールの情報のみで判断するのでなく,面接や観察と合わせて総合的に判断すること(テストバッテリー)が大事です。しかし,忙しい教師生活のなかで子どもたちのアセスメントに欠かせないアセスを活用して,子どもたちの背景を同僚とともに読み取ることで,適切な支援が見えてくるので,もしまだ活用されていない先生がいるなら,活用されてみることを強くおすすめします。

最新アセスweb版について

【アセス・B-SAFEとは?】

最新アセスweb版では,子どもたち一人一人の状態がより見やすく,支援が必要な子どもをすぐに把握できるようになっています。

また,学校レベルだけでなく教育委員会,市町村レベルで,子どもたちの適応状態を把握することができるようなシステムが現在開発され,それらと支援を結びつける実践が始まっているというお話でした。

これまでは,読み取りは何とかできても,どういかしたらいいのか迷う先生もいたと思うのですが,最新web版アセスを導入することで,最前線で子どもたちの指導支援にあたっている先生も,教育委員会等で複数の学校を統括されている先生にとってもかなり有益で強力なツールになる予感がしました。気になる方は,ぜひ,AISESの個別説明会を活用してみてください。

アセスWEB版説明会(自治体・学校向け)開催のお知らせ

(執筆:兵庫教育大学大学院 学校教育研究科 准教授 真田穣人先生)