ブログの更新がずいぶん滞ってしまいすみません。やはり年度末,年度始めは何かと忙しくって…(←言い訳)。
みなさんは,新年度のスタートはどうでしたか?子ども達はどうですか?
5月に入り,コロナの状況も落ち着いていて,これから遠足や校外学習などの行事も予定されているかもしれませんね。
そこで今回は,「校外学習とピア・サポート−野外炊飯編−」というお話をしようと思います。
ピア・サポートプログラムを活用した班活動
このブログシリーズの第5回と第6回でもお伝えしたように,私のMLA実践の中でポイントなったのは,ピア・サポートプログラムを活用した班活動でした(詳しいことは第5回,第6回を読んでみてくださいね)。
班長をピア・サポーターとみなし,日常的な班活動(清掃,日直などの当番や学習時のグループ活動)をピア・サポート活動として位置づけて進めていきました。
さらに,日常での班活動の発展として,行事にも班を大いに活用しました。
ある年,校外学習として野外炊飯を行うことになりました。野外活動施設に出かけてみんなでカレーライスを作るのです(定番ですが,楽しくて学びになって,そして美味しいですよねぇ)。
この校外学習にピア・サポートプログラム(PSP)を活用しました。
班長にすべてまかせる
まず行ったのは,班長だけを集めての班長会議【PSPの計画と練習】。
校外学習の内容とカレーライスの作り方を説明した後,班長が行うこととして,班会議で「説明された内容の伝達」と「役割決め」を進めるように伝えました。
「担任の先生は,当日もそれまでの活動でも,基本的に何も手伝いません」
「もっと言えば,詳しい話は担任の先生もよく知りません」
「だから,自分の班が美味しいカレーを食べられるかどうかは班長にかかっています」
と,こんな感じです。
班長にとってはかなりのプレッシャーですよね。
なので,この班長会議ではしっかりと事前の練習も行いました。
良い説明のやり方って??
この時に行ったのが,ピア・サポートトレーニングの一つ,「一方通行と双方向のコミュニケーション」でした。
何かを説明するのに一方的に説明することは,説明する側も伝わっているのかどうか不安になるし,聞く側もよくわからなくなってしまいます。これを体験的に学ばせるのです。
具体的には,ある図形をペアの相手に説明し,白紙の用紙に再現してもらう活動をします。
始めは,説明する側と聞く側が背中合わせで座り,助言も質問も一切なしの一方通行のコミュニケーションをやってみます。当然,「全然わからへん!」「めっちゃ説明しにくい」となります。
続いて,今度はペアで向かい合わせになり質問や助言もOKの双方向のコミュニケーションを体験させます。「説明のスピードや内容の調整ができていい」「質問できるからわかりやすい」などの感想が出ます。
そうやって,「コミュニケーションは双方向であることが大事だよね」「校外学習の説明も班メンバーの質問・疑問を聞きながら双方向でやってみよう」と伝えていくわけです。
こうしてトレーニングを行うことがPSPのポイント!
トレーンングをしたことが根拠となって,説明に自信のない班長もチャレンジできるし,結果,上手く説明したり役割決めをしたりすることができ,それが班長の自己有用感を高めることになるのです。
さらに,それは当日の活動にもつながっていきます。
当日,担任である私の唯一の仕事は…
校外学習の当日【PSPの活動】はどうなったでしょうか?
説明に成功した班長は,当日もしっかりと班のメンバーをリードしました。
おかげで,私の学級の場合,私がやった仕事はただ一つ,それは,ライターで火種となる新聞紙に火をつけたことだけでした。
班長を中心に,それぞれの生徒が分担された役割を果たし,助け合いながらちゃんと食べられるカレーライスを完成させました。少ししゃばしゃばなカレーや焦げたご飯の班もあったけど,自分たちだけでやったからこそ,誰かのせいにするでもなく自分たちの成果として受け入れていました。
また,この施設は後片付けがとても厳しくて結構やり直しになったりもするのですが,なんと全ての班が一発合格!これも,先生が基準を作るのではなく,班長がきちんと仲間の仕事をチェックしたからだと思います。
ふりかえりでの子ども達のコメント
校外学習終了後は,ふりかえり【PSPのふりかえり】をします。
班長は班長として,班員は班員としてふりかえりをするのですが,この時班員からよく出てくるのは,「班長がみんなのために頑張ってくれた」と班長のリーダーシップを称えるコメントです。
一方の班長からは,「まとめるのは難しかったけど,班のみんなが協力してくれた」と言ったコメントが多くみられます。
これってどういうことかわかりますか?
班長は班員のことを考えつつ班員に助けられたと感じ,班員は班長に感謝し逆に班長をフォローしようと考えているわけです。
PSPの練習→計画→活動→ふりかえりという仕かけがあってこそ,班長のチャレンジと成功体験→班員の班長に対するフォロー→仲間意識の高まりという好循環をもたらすのです。
信じて期待してまかせる
今回のお話はいかがでしたか?
日常の学校生活で培われた支え合う関係が,行事などを通じてさらに醸成されて,仲間どうしの支え合いで子どもを育てるというMLAの根幹の部分が形になっていくのだと思います。
もっというと,同じようにPSPのサイクルを次の行事も,その次の行事にも仕かけていくことで,ポジティブな効果は螺旋状に積み重なっていきます。
ただ,“うちの子どもたちにはそんなふうに任せるのは難しい”と思った先生もいるかもしれませんね。
そんなことはありません。私の受け持った子どもたちの中にも難しい子どもはたくさんいました(なんせ大阪やからね^^;)。それを子どもたち自身が支えるのです。
子どもたちを信じて任せれば,きっとできます!!
大切なのは,教師の少しの勇気で,子ども達に成長の機会を提供することなのです!