市全体で取り組むMLA
執筆:村山 俊(総社市教育委員会指導主事)
総社市が不登校対策としてMLAに取り組み始め,9年が経とうとしている。
「だれもが行きたくなる学校づくり(以下だれ行き)」と称したこの取組について,最初は消極的であった教職員もその意図を理解し成果を感じるにつれ,前向きに取り組むようになった。
その成果とは不登校減少,問題行動減少といった学校全体の落ち着きはもちろん,若手教職員の教育の拠り所となっていることも大きい。
MLAでは基本的な考え方(理論)と,その達成のための手法(実践)がバランスよく示されている。
総社市では理論と実践の両面からアプローチできるように研修を計画しており,市内全幼稚園,こども園,小学校,中学校の全教職員が毎年一定量の研修を受けている。
また,私立保育園にも参加を呼びかけており,市内すべての保育園から研修会に参加がある。
校種を超えた参加者が同じ研修を受け,子どもの成長とMLAについて協議する。
このことにより,異校種理解の深まりと校種間連携が活発になり,就学前から義務教育終了までの教育活動につながりが生まれた。
市全体で取り組むということは,市内で転勤してもその学校ではMLAの考え方に基づき「だれ行き」が行われているということである。
総社市の教職員にとって「だれ行き」は共通言語なのだ。
この取組が成果を挙げるには一朝一夕にはいかない。
図1はMLAの全体像である。
この全体を理解し,実践力を養うためには,ある程度の研修量が必要である。
新たな試みを“とりあえずやってみる”ことで,結果,成果を挙げるといったこともまま見受けられるが,ことMLAについては“とりあえずやってみる”だけでは成果は表れない。
取組は継続せず,真の理解を得ず,効果を感じないまま立ち消えてしまうだろう。
また,MLAはチームとして取り組むことで効果を発揮するため,一部の教職員だけの理解では難しい面もある。
もちろん研修を受け,理解ある者がリーダーとなって校内研修等で広めることができればよいが,リーダーが数十時間研修を積んで得たものを,数時間の校内研修でまとめて伝えることは不可能である。
加えて総社市では新採用や市外からの転入により,毎年約1~2割の教職員が「だれ行き」を知らない状態で新年度がスタートする。
取組の質の維持と深化,若手育成のためにも,教職員が計画的に研修を積むこと,そしてそのためにも行政として研修を継続して実施することが重要であると考えている。
ほんの森出版より マルチレベルアプローチ だれもが行きたくなる学校づくり 日本版包括的生徒指導の理論と実践 が出版されています。
≪AISESは、フィリピンのストリートチルドレンをはじめ、困難な背景を抱えた子どもたちへの支援活動を行っています≫
私たちの活動にご協力いただけませんか?