マネジメントの視座から
執筆:米沢崇(広島大学大学院教育学研究科准教授)
MLAによる各取組は、個人でいくら頑張っても、単発的な取組に終始する。
となると、学校が教育目標を明確にして、その達成に向けて、ヒト・モノ・カネなどのリソースを効率的に遣り繰りし、組織的に取り組んでいく「マネジメント」の視点が重要となる。
例えば、「ヒト」というリソースに着目すると、MLAでは、学校が生徒指導を組織的に推進する上で、プロジェクト全体の核となる人材(例えば、ミドルリーダー)の育成を重視している。
例えば、総社市では、各取組の責任を負うシニアリーダーを約20名、取組全体の責任を負う推進委員を約10名、市として指名している。
さらに、MLAでは、個の育成だけでなく、組織の育成も重視しており、例えば、複数のミドルリーダーが学校の目指す目標の達成に向けて集い、ミドルリーダーチームを編成し、全教員が個々の役割を明確にし、組織的活動に参画できる組織体制を確立するように支援している。
MLAに取り組む学校では、ミドルリーダーチームやMLAの各取組を推進するチームを編成したり,学習部が協同学習を,特活部がピア・サポートを担当するなど,各取組と校内推進システムを整合させる工夫も行っている。
また、MLAによる各取組を継続的なものとするためにはマネジメント・サイクルを循環させることが重要となる。
例えば、教科の授業に協同学習を取り入れるという短期的視点でみると、協同学習を取り入れた学習指導案の検討・作成(Plan)、授業の実施(Do)、評価と振り返り(Check)、成果と課題を生かした次回の授業改善(Action)という一連のPDCAサイクルの循環が考えられる。
また、学期・年間という中・長期的視点でみると、自校におけるMLAの取組の目標やMLAの全体実施計画の策定(Plan)、MLAの取組の全校実施(Do)、評価と振り返り(Check)、成果と課題を活かしたMLAの全体実施計画の改善(Action)というPDCAサイクルの循環が想定される。
とりわけ、中・長期的視点でのマネジメント・サイクルを循環させるためには、学校・教育委員会・大学が連携・協働するための全市的なシステムを構築する必要がある。
最後に、MLAでは実施当初、実現が困難と思えるような目標を必ず設定する。
例えば、「全市で不登校を無くす」といった大きな目標である。
その理由は、この目標(希求する将来の姿)から逆算して、目標達成のために何が必要なのかを考え、それを何としても実現していく「バックキャスティング」(Lovins, 1976)という未来志向のアプローチをとることが大切だからである。
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