【ブログ】教育新聞連載 第9回 「MLAにおける特別支援教育」 執筆:髙橋あつ子

MLAにおける特別支援教育

 執筆:髙橋あつ子(早稲田大学大学院教育学研究科教授)

 

通常の学級における特別支援教育やインクルージョンを考える時、マルチレベルアプローチ(MLA)の威力は大きい。

特別な教育的ニーズのある子どもたちの育ちにくさに対し、まずマルチエリアの要素を集団の場で実践する(横)。

それを基盤に縦に二次支援、三次支援を加えていくのだ。

 

 

ピアサポートで人とのかかわり方やその意義を学び、SELで自分の感情をモニタリングし、他者の気持ちを推測する体験を積む。

協同学習で他者との語らい、学びを深める。

それでも領域によっては、育ちにくい子どもに小集団で、あるいは個別に支援を重ねていくのがマルチレベルである。

 

多くの通常の学級担任にとって、一次支援の要素を学んでも個に応じた支援は容易ではない。

そこにアセスメントが活用され、特性に応じた二次、三次支援を展望する。

例えば、協同学習を学んだ教師が技法を適用しても、ASDの子は参加しにくく、学習障害の子は能力を伸ばしにくい。

そこに注目すべきが学びのユニバーサルデザイン(UDL)である。

これは一斉指導の枠組みを超え、複数の方法を提供することによって子どもが自分に合った学び方を選べる枠組みである。

教育モデルから学習モデルへ、教師主導から学習者中心のシフトチェンジに相当する。

これによって多様な特性のある子どもたちだけでなく、困難を感じなかった子ども達も自己選択、自己決定する力、多様な学習方略を駆使できる力を育める。

たとえば、国語の読解であれば、音読も黙読も音声CDをイヤホンで聞くのでもいい。

紙媒体でもデジタル教科書でもいいし、一人で考えてもペアでもグループでもいい。

読み取ったことを伝える際も、話し言葉だけでなく文字、イラスト、フローチャートで表現してもいい。

子どもは自分でチョイスできるとき、見違えるほど意欲的に取り組み始める。

 

合理的配慮はニーズのある子どもに提供される権利である。

しかし、皆が同じ方法で学ぶことが当たり前だった日本では特別扱いになりやすい。

それに比して、UDLは一次支援から個に応じるモデルであり、ある子にとっての合理的配慮も、皆が自分に合った方法を選ぶ日常の中では一次支援の当たり前の1コマになる。

UDLはすべての子どもたちのための支援の枠組みなのだ。

特定の子どもに提供される三次支援ではなく、皆に提供される一次支援であり、多様性を包含したモデルゆえ、さらなるインクルージョンを推し進めるのに有効なフレームワークだといえる。

 

 


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