MLAとアセスメント
執筆:山崎 茜(広島大学大学院教育学研究科客員准教授)
MLAで大切にしていることは,どのような支援や指導においてもまず「子どもの多様な背景をきちんと理解」し, 「理解した背景に添った支援・指導をする」ということである。
単にMLAのプログラムを実行するということではない。
社会の急速な変化に伴い,子どもの心身の発達において従来の枠ではとらえきれない新しい複雑な課題が生じ,これまで通用してきた経験や勘がいままでのように通用しなくなり,教師は日々手探りで実践をせざるを得ない状況がある。
ただ,それは教師が苦戦していると言うだけではなく,子どもたちに必要なサポートが届かず,子どもたちも苦しんでいると言うことなのである。
どうすればこうした状況を打破し,子どもたちを成長させていけるのだろうか。
そのために重要なのは,子どもの課題や状態(ニーズ)をアセスメントすることである。
この時,表面的に見えている行動だけに目を向けるのではなく,ASSESS(栗原・井上,2010)などの客観的な指標を用いて子どもの心的状態を把握したり,成績や作品など様々な情報を収集したりしてその子どもの心理的発達や愛着形成の具合,発達的な特性といった観点からアセスメントを行う。
特に最近は子どもが愛着形成に課題を持ち,その結果発達障害様の行動をとりその対応に苦慮するケースや,子どもの困った行動の背景に虐待の影響が考えられるケースも見られる。
このアセスメントが的確であるかどうかが,その後の子どもへの支援や指導を的確なものにできるかどうかに関わる。
また、実際の支援や指導にあたっては、子どもの課題の理解だけではなく,例えば子どもの持っている資質や能力,興味,関心などの内的資源や、子どもの周りにあるサポート資源といったことまでも理解されていることが重要になる。
それらを活かした支援や指導はさらに効果的なものとなるからだ。
さらに、MLAでは個人の成長だけではなく、協同学習やピアサポートといった集団の成長に焦点を当てたプログラムが展開される。
そのため,個人だけでなく集団のアセスメントも同様に重要である。
MLAでは教職員がチームとして子どもの全人的な成長を支えることを目的としている。
チームとして支援にあたる時、チームの中で子ども理解が共有され、方針が一致していることは何よりも重要である。
的確な理解が的確な支援を支えるのである。
多様な人材を擁する「チーム」として、共通の理解と方針に従い、多様な立場から子どもに関わることが子ども達を育てていくのである。
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