MLAにおける協同学習
執筆:沖林洋平(山口大学教育学部准教授)
協同学習は,MLAの中でも,学習場面におけるピア機能の向上に焦点を当てるプログラムである。
しかし,集団の機能向上だけがプログラムの目的ではない。
MLAの協同学習の理念は,自立した学習者として適切に社会的・情動的スキルを使って個々のキャリアに関する目標達成を目指すことができる個人を育成することにある。
MLAにおける協同学習の特徴は,すべての児童生徒を対象にして,感情の交流を基盤にした学習内容に関するコミュニケーションを楽しむことを念頭に置いている点である。
学習内容が分からない状態から分かるようになる過程で,分からない状態に対する苦しさや,分からないことを表明したり相談したりすることへの懸念を集団で共有することを出発点にしなければ,真に学習をサポートしあえる集団にはならないと考えたことが,MLAの協同学習が感情の交流を重視することに繋がっており,これはMLAの取り組みの当初から現在まで変わっていない。
感情の交流を基盤とした集団の成長という理念のもと実施した協同学習の効果として,我々が実施した調査で興味深い結果が得られている。
中学生の生活満足感に影響する要因について,協同学習の実践校と非実践校を比較した調査を実施した。
その結果,実践校では友人からのサポートが有意であったのに対し,非実践校では有意な影響は見られなかった。
これは,教師が学習場面での集団を重視した指導の観点を持つことで,いわば一歩引いた指導となり,児童生徒のコミュニケーションを促進したことを示唆するものである。
また,MLAの協同学習は,PBISやSEL,ピア・サポートの各プログラムでトレーニングしたスキルを授業場面で活用する場として位置づけている。
そのために,授業において協同を要する場面を質的・量的に豊富な場面で実施することや,通年ですべての児童生徒が多くの役割を経験することを提唱している。
多様なスキルを繰り返し活用し,集団におけるリーダーシップの機能的な分割を目指すことにより,MLAの4つのプログラムは日常の授業場面で密接に関連する。
そして,すべての児童生徒が学習に意欲的に取り組むことはUDLの理念である。
現在,MLAでは,児童生徒がそれぞれに高い目標をもって助け合いながら学びあう協同学習の実現を目指している。
それは,「主体的・対話的で深い学び」に対して,MLAが提案する学びの在り方のひとつである。
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