令和5年3月、文部科学省は「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」を公表しました。
全国で増え続ける不登校の課題に対し、学校・行政・家庭が連携して「学びの場の確保」「心の小さなSOSの見逃し防止」「学校風土の見える化」を進めることを目標としています。本記事では、特にアセスメント(児童生徒の心身の把握=心の健康観察)がなぜ重要なのか、学校現場や保護者が実行できる具体的手法を、文科省資料や関連報告をもとに分かりやすく解説します。
COCOLOプランとは何か
目的:不登校の児童生徒すべての学びの場を確保し、「学びたい」と思った時に学べる環境を整備すること。
三本柱:①学びの場の確保、②心の小さなSOSを見逃さない(チーム学校で支援)、③学校風土の「見える化」。
背景:小中高の不登校は増加しており、90日以上の不登校や専門支援を受けられていない児童生徒の数などの課題が示されています。
なぜ「アセスメント」が重要なのか
早期発見で介入の効果が高まる
心の問題や「小さなSOS」は外見上わかりにくく、放置すると長期化し学習機会を失うリスクが高まります。定期的なアセスメントにより早期に支援につなげられることが政策上も強調されています。
データに基づく個別支援が可能に
1人1台端末や観察ツールを活用すると、教職員の観察だけでは気づきにくい変化を拾えるため、スクールカウンセラー等と情報共有し、適切な支援計画を立てやすくなります。
学校全体の「風土の見える化」に寄与
アセスメント結果を集約・分析することで、特定の学級や学年における負担やリスク要因が見え、組織的な改善(授業形態・いじめ対策・生活支援など)につながります。
学校・教職員ができる「実践的アセスメント」ステップ
定期的なアセスメントツールを活用
定期アンケート(気分・睡眠・学校の居心地など)をを実施し、データは教員、養護教諭、SCで共有。
観察→スクリーニング→専門連携
アンケートで変化が出た場合はSSWやSCが面談→必要に応じて医療・発達支援や家庭支援へ連携する流れを明確に。文科省も学校内外の専門機関連携を推奨しています。
保護者との情報共有の仕組み
保護者用の情報提供様式や相談窓口一覧を活用し、家庭と学校が協働して小さなサインを見逃さない。
学校風土の「見える化」ツール活用
いじめや教室の居心地、教職員の負担などを可視化し、改善策をPDCAで回す。COCOLOプランで示された方向性と一致する実践です。
アセスWEB版
令和6年度の小・中学校の不登校児童生徒数は、約35万4千人で、過去最多を記録しました。この数は前年度よりも増加しており、12年連続の増加となります。
COCOLOプランで学校風土の「見える化」ツールとして紹介されたアセスを導入した学校では、1~2年で不登校児童生徒数の減少が見られるケースも少なくありません。
データに基づき予防的な対策を取ることで不登校の増加を抑え、教員の「見立て」の力を養成することで、効果的な取り組みを学校全体で展開していくことが可能になります。
保護者の皆様に伝えたいこと
「見逃さない」――家庭からの小さな変化(睡眠・食事・登校意欲など)も学校と共有してください。
「早めに相談」――専門支援につなげることで子どもの学びの機会を守れます。
「データは味方」――学校でのアセスメントは個人攻撃ではなく、支援設計のための重要な情報です。
参考(出典)
文部科学省「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」(令和5年3月).
文部科学省「不登校児童生徒の支援に係る相談窓口・情報提供等について(令和5年7月31日)」など関連通知・資料一覧.
文部科学省説明資料(心の健康観察・ICT活用等に関する記載).
文部科学省「不登校対策(COCOLOプラン)の進捗状況」(進捗レポート)令和7年11月7日.


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