ハワイの小学校における包括的学校支援 ②
執筆:金山健一(神戸親和女子大学)
4.UDL(学びのユニバーサルデザイン)
ハワイの調査研究校の公立Kanoelaniと日本の小学校の教室構造は、まったく異なります。
ハワイの小学校では、子供たちのために教室に様々なスペースが設けられています。
机も、円形もあれば、四角いものもあります。
天井には様々な掲示物が展示されています。
教室の構造は、日本とは全く違う構造であり、UDL(Universal design for learning)が広く実践されていました。
子供たちの中には、絨毯の上で寝そべって学習している子もいます。
聴覚過敏の子供たちや集中力の不足する子供たちは、ヘッドホンを利用してパソコンを自在に操り学習を進めていました。
また教室の隅には三角形の小さなテントがあります。
子供たちが自分の感情を理解し、暴れたくなったりイライラしたりした時には、このテントに避難し、クールダウンするのです。
このような光景は、一見統制が取れていない学級のように見えますが、結果としてこの小学校はハワイNo1の学力を有しているのです。
5.HA:BREATH プログラム
調査対象校の小学校では、Choose Loveと呼ばれるプログラムを実施しています。
HAは、そのプログラムの1つです。
HAは、幼稚園年長から高校3年生(K12)の全ての生徒を対象として、強化すべき6つの成果を目指しています。
6つの成果とは、①帰属意識の強化、②責任感の強化、③卓越感の強化 、④アロハの意識の強化、⑤全体の幸福感を強化、⑥ハワイの意識の強化です。
① 帰属意識の強化
私たちは1人で生活しているのではなく、地域社会そして過去・現在・未来とその連続性の中で生きています。
その中で自己と他者が対話し、敬意を持って関わることが大切です。
② 責任感の強化
私たちは自ら積極的に、自分自身、家族、地域社会、そしてより広範囲な社会に対して責任を持つ必要があります。
他者の価値観、ニーズ、および幸福について深く考え関わっていくことが大切です。
③ 卓越感の強化
私たちは学校でも人生においても、成功することができると信じています。
そのためには、学ぶことが大切です。
卓越感を得るには、愛を学び、スキルを追求し、知識と行動を身に付け自分の可能性を開くことです。
④ アロハの意識を強化
私たちは、アロハには共生・共存・多様性の精神があることを意識し、自分自身、家族、およびコミュニティを尊重します。
また、全体の利益のために信頼関係を築き、感謝の気持ちを示すことが大切です。
⑤ 全体の幸福感を強化
私たちは健康的なライフスタイルについて学び実践しています。
幸福感は、心、身体、気持ち、精神を改善し、よい選択をすることで得られます。
家族、地域、コミュニティ、および世界の幸福に貢献することが大切です。
⑥ ハワイの意識を強化
私たちが住むハワイは、かけがえのない場所です。
ハワイでは、豊かな歴史、多様性、原住民の言葉と文化に感謝することにより、ハワイの意識を高めることができます。
その中で、文化とコミュニティをうまく融合させることができます。
(つづく)
≪AISESは、フィリピンのストリートチルドレンをはじめ、困難な背景を抱えた子どもたちへの支援活動を行っています≫
私たちの活動にご協力いただけませんか