ハワイの小学校における包括的学校支援 ①
執筆:金山健一(神戸親和女子大学)
1.ハワイの包括的学校支援
日本ピアサポート学会は、ハワイの公立Kanoelani小学校において調査研究を実施しました。
調査対象校のKanoelani小学校は、国語、数学、理科の学力テストでハワイの全小学校No1の高い学力を維持しています。
そこでは、Choose Loveと呼ばれる、HA・SEL・PBISなどを含む質の高い包括的支援プログラムが実施され、成果を上げています。
HAはNA Hopena A'oの略を意味し、ハワイ文化・風土を意識したプログラムです。
ハワイのアロハに込められた、共生・共存・多様性の精神が、学校教育・地域で尊重されています。
SEL(Social and emotional learning)「社会性と情動の学習」とPBIS(Positive behavior interventions and supports)「ポジティブな行動介入および支援」のプログラムは、日本でも紹介されて少しずつ実践報告がなされてきているものとほぼ同じものです。
調査は、これらのプログラムを実施する学校の学校長のリーダーシップの視点からも行いました。
2.小学校長のリーダーシップ
訪問した先の小学校の校長のリーダーシップについて報告します。
学校紹介のプレゼンテーションにおいて、校長は自らが全てをプレゼンするのではなく、各担当教師にプレゼンを担当させていました。
スクールカウンセラー、PBISを担当する生徒指導担当教員、SELを実践する若手の教師などが、生き生きと学校運営に関わっていることがよく理解できました。
また、驚かされたのは、我々日本から来た学会の視察メンバーに対して、学校内を説明してくれたコーディネーターが小学生だったことです。
私のグループを担当したのは小学生4年生。
日本ならば、仮に小学生が担当するとしても、高学年である6年生が担うことが多いと思います。
しかし、学校長は、子供の力を信じ、4年生に任せていたのです。
これこそまさに、子供たちに成長の機会を与え、真の意味で社会化を促進していると言えるでしょう。
3.保護者の関わりと校長の裁量権
今回、我々が小学校訪問した際には、多くの保護者が関わっていました。例えばハワイは日系の保護者が多く日本語と英語の両方話せる方が多数います。
我々のグループの通訳は保護者であり、学校のことをとてもよく理解し、我々の質問にも的確に答えてくださいました。
また、学校の運営資金に充てるため、子供・保護者が作ったブレスレットなどが販売されていました。
仮に日本でこのような子供・保護者の作成品などを販売する場合、社会問題となる可能性もあります。
このようなことが可能なのは、校長の裁量限が日本と違い大きいということが考えられます。
≪AISESは、フィリピンのストリートチルドレンをはじめ、困難な背景を抱えた子どもたちへの支援活動を行っています≫
私たちの活動にご協力いただけませんか