フィリピンの未来を支える子どもたちのキャリア能力を育てる
私立学校でのキャリア開発プログラム総括
フィリピンの子どもたちの7割は将来の夢を持っていないという調査結果があります。
https://www.techshake.asia/articles/58-the-dream-project-ph
貧困と暴力が蔓延する社会的な状況の困難さが夢を持つことを妨げているのかもしれません。
しかし,それはフィリピンという国の発展を阻んでしまうことにも繋がります。
AISESがフィリピンでキャリア教育に取り組んでいるのは,こうした問題に少しでも寄与するためです。
また,そこで得られた知見を日本の教育に還元するためでもあります。
3月19日,この日はキャリア教育支援を行っている Plaise Emerald International School で,代表理事の栗原が秋以降に取り組んだキャリア開発プログラムのまとめの授業として人生設計を行うワークショップを行いました。
子どもたちの眼差しは真剣そのものでした。
写真はそのときの様子です。
ところで,困難に直面したとき,二つの対処方法があります。
一つは問題そのものを解決する問題焦点型コーピングと言われる方法です。
もう一つが喚起された怒りや不安などの感情を減ずる方法をとる情動焦点型コーピングです。
気晴らしやリラクゼーション,感情表出などがその主な方法になります。
情動焦点型の場合は問題自体は何も解決しませんので,問題焦点型の方がよいように思えますが,実際には解決しない問題も多く存在していますから,両方の対処方略をもっていることが重要だと思われます。
話がそれましたが,問題焦点型コーピングを実践するには,問題解決スキルや解決過程を管理する実行スキル・管理スキルが必要になります。
これらのスキルが乏しければ,問題はいつまでたっても解決しないことになります。
実はフィリピンの人たちは情動対処型コーピングについては非常に優れていますが,問題解決スキルや実行スキルに乏しい傾向があるように思われます。
その結果として問題がいつまでも解決せず,結果として彼らの得意な情動焦点型コーピングに頼ることになるというサイクルがあるように強く感じました。
そこで今回のキャリア開発プログラムは問題焦点型コーピングスキルに焦点を当てたプログラムとして構成し,4回の事前授業,2泊3日のキャリアツアー,6回の事後授業を組み,彼らのキャリア能力の開発に取り組みました
最後の授業でのアンケートからは今回のプログラムが予想を超える効果があったことがうかがわれました。
今回、タガログ語の通訳として同行してくれたのは,フィリピンで成長したフィリピン人と日本人のハーフの19歳の学生でしたが,彼に聴くと,「今までこんな教育は受けたことがない。自分の高校時代にこういったワークや話を聞くことができたらよかったのに」と大変興味を持ってくれました。
ひょっとしたら,こうしたプログラムがもっと広く行われることが重要なのかもしれません。
来年度は事前にツアーをする予定を組み込めるため、より充実したツアーを開催できそうです。
また、9年生、10年生にこのツアーは実施するため、2年連続でツアーを経験する現在の9年生の子どもたちがどのようなことを感じ、どのような成長を遂げるのかも楽しみです。
以下に子どもたちの感想をいくつかあげておきます。
① このツアーで,人生について考えました。
何年か後、私たちは仕事をするようになります。
だから若い間に将来のことを考え始めなければならないことに気づきました。
今から将来に対して夢を持つことは悪くない、なぜなら私たちは未来に向かって行きていくのだから。
このことに気づくためのツアーでした。
キャリアツアーは私たちに変わる機会を与えてくれました。
② 私が学んだことは,将来の計画をどのように立てるかを知っていなければならない、ということでした。
達成したいゴールに達成することに焦点を当てるためにしっかりと準備し、計画しなければいけないことがわかりました。
もう一つはこのツアーは将来何をしたいかということを選ぶ上で助けとなりました。
私がインタビューした人たちは自分がしていることを楽しんですることが、目的への道を容易にしてくれるということだと教えてくださいました。
③ 今、将来を計画しなければならないこと、将来に到達したいところまでの道のりを自分で管理しなければならない (manage)ということを、学びました。
≪AISESは、フィリピンのストリートチルドレンをはじめ、困難な背景を抱えた子どもたちへの支援活動を行っています≫
私たちの活動にご協力いただけませんか