監修:栗原 慎二
昨年度から7回に分けて投稿してきたLGBT入門講座ですが、今回をもちまして終了とさせていただきます。
ここまでこのコラムを読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。
この講座を通して、少しでもLGBT当事者の悩みや支援の重要性を知っていただけたのであれば幸いです。
最後に、今回紹介しきれなかったLGBTに関する問題を紹介していきたいと思います。
このコラムでも何度かお話ししましたが、学校現場で現在最もと言っていいほど支援の必要性があるとされているのが発達障害当事者の子どもですが、発達障害を抱えた人の中にも、LGBT当事者は当然存在しています。
このように2つのマイノリティによる悩みを抱える人を「ダブルマイノリティ」と言う場合があります。
発達障害当事者は、人とのかかわり方において難しさがあり、その中で自分の好きになる対象が周りの人と違ったり、こころの性に違和感があったりする場合は、より一層生活の難しさを感じることが多くなる可能性が高いです。
様々なマイノリティの方が抱える難しさを一つでも知識として知っておくことが、今後の支援のカギとなります。
学校現場だけでなく、社会に出てからもLGBT当事者の困難は続きます。たとえば、仕事をする上でも、職場内で「あの人って男?女?」とうわさされたり、上司や同僚から「いつ結婚するの?」と言われたりするなどのLGBTに対するセクハラが存在します。
また、実際パートナーと生活を共にしていても、制度上結婚ができず、入院や死亡した際に、親族として立ち会ったり面会したりすることができないケースも多く存在しています。
学校現場だけでなく社会全体で考えていかなければならないLGBT問題ですが、まずはこれからの未来を創っていく子どもたちに適切な知識や考え方を身に着けさせるという面で、LGBT教育は重要な役割を持っています。
LGBTは性に関する悩みのため、学校現場で扱いにくいと感じる方もおられるかもしれませんが、性の悩みは特に思春期の子どもにとっては切っても切れない問題です。
また現在、学校現場だけでなく、児童福祉施設の現場においても性の問題は重篤化しています。
虐待など様々なストレスを抱えた子どもたちが集団生活を行う場で、異性間だけでなく同性同士でも性行為を行い、施設内で大きなトラブルとなっている事態も起こっている状況です。
実際にその子どもたちがLGBT当事者であるかどうかは別として、性的なかかわりを適切に行うことの重要性や、性行為のリスクなどを、より身近に考え、伝えていかなければならないと感じます。
このほかにも、LGBTに関する問題は数多く存在しています。
もちろん、その全てを学校現場だけで解決するというのは不可能です。
学校現場に関係なく、すこしでも多くの人がLGBTや多様な性の考え方を当たり前に受け入れられるような社会になることが理想ですが、まずは、学校現場でのLGBT教育や支援が広がっていき、すべての子どもが生活しやすい学校になっていけばと思います。
参考文献:『LGBTって何だろう?からだの性・こころの性・好きになる性』2014初版 薬師実芳(特定非営利法人ReBit代表理事)・笹原千奈未・古堂達也・小川奈津己(Rebit所属)著 合同出版