監修:栗原 慎二
前回は、学校現場でできることとして、周囲の理解を広めるために学校の先生ができることについて考えました。
今回は、様々な悩みをそれぞれに抱える当事者を個別に支援していくことについて、お話ししていきたいと思います。
第3回でお話ししましたが、LGBT当事者の最も大きな悩みとして、カミングアウトの問題があります。
周囲や自分が持つ同性愛嫌悪(ホモフォビア)によって、なかなか自分を受け入れられない中、「自分はおかしな存在なのだろうか」と感じ、誰かにこの悩みを知ってほしいと思う当事者もたくさんいます。
また、第4回でお話をしましたが、男女で分けられる場面が多く存在する中、生活をする上での困難を抱えている子どもたちに対して、どんなことで困っているのかを聞き取ったうえで、支援を行っていくことももちろん重要です。
このような悩みを持つ子どもがいた場合、どのようなことを心掛けて相談に乗ればよいでしょうか。
カミングアウトをするLGBT当事者を大きくわけると、とにかく自分のことを知ってほしい、受け入れてほしいと感じている人と、実際生活で困っていることがあり、解決のために相談する人という2パターンになります。
まずは、相談の内容などから、「知ってほしい型」か「困っている型」かを見極めて相談にのることが重要です。
相談に乗る際、「この子はつまりゲイ?トランスジェンダー?」など、どういったセクシュアリティか考えてしまうことがあるかもしれませんが、基本的にセクシュアリティは流動的であり、本人もよくわかっていない場合があります。
その子がどういうセクシュアリティかを決定するのではなく、セクシュアリティに関係なくその子自身を受け止め、最後まで話を聞くことがその子にとって大きな力になります。
また、「そういうことは一過性のもので、異性を知れば治る」という人もいますが、性はグラデーションであるため、同性を好きでも、からだの性とこことの性が一致していなくても、それは病気ではないので、「治る」という表現が適切でないことは、ここまでのコラムを読んでくださっている皆様はわかっていただけていると思います。
また、相談を受けた際、ほかの誰かに話しているのか、だれに話してもいいかを確認しておくことも重要です。
学校はチームで支援することが多いため、その子の状況を多くの大人が把握する必要がある場合もあると思いますが、LGBT当事者にとって、自分がカミングアウトした以外の誰かに自分が当事者だと知られるというのは、精神的にダメージが大きく、誹謗中傷のリスクにもつながります。
学校現場での情報共有にはもちろん守秘義務が伴いますが、より配慮のいる問題であるという認識は必要だろうと思われます。
相談できる環境は、学校だけでなく、外部の存在も大切です。
現在、大阪府の淀川区や横浜市などの地域では、LGBT当事者のための電話相談が行われでいたり、当事者が集まれる場が存在していたりします。
当法人がある広島でも、行政機関と広島県セクシュアルマイノリティ協会が連携し、毎月第2曜日に電話相談が行われるようになるなど、LGBT当事者のための相談機関が増えてきています。
そのような情報を知り、他機関と連携することで、先生方もより支援が行いやすくなるのではないかと思います。
参考文献:『LGBTって何だろう?からだの性・こころの性・好きになる性』2014初版 薬師実芳(特定非営利法人ReBit代表理事)・笹原千奈未・古堂達也・小川奈津己(Rebit所属)著 合同出版