ハナホリ小学校での音楽教育とUDL
執筆:広島大学 福田 麟太朗
私は,広島大学大学院で,小学校の音楽の授業を通して子どもたちが生涯音楽を学んでいけるようにするためにはどうすればいいかということについて研究しています。
今回のハワイ研修では,少しそのことを頭に入れて学校訪問し,そこから得た学びを共有していければなと思っています。
今回は,数ある訪問先のうちの一つであるハナホリ小学校での学びを紹介します。
ハナホリ小学校ではジョン・デューイの教育思想のもと教育が展開されています。
具体的には、“Hanahauoil honors the natural way children learn through doing – by making learning exciting challenging and enjoyable.” 「活動する(作ったり,学んだり,面白くしたり,挑戦したり,楽しくする)こと」を基に,子供にとって自然な学び方をできるようにそのカリキュラムを作っているそうです。
この考え方が学校に浸透しているから活動的であり,意味あるものになっている、そして,これは日本の音楽教育をよりよくするためのヒントが詰まっていると感じました。
例えば、ハワイにおける感謝祭では,伝統楽器を使ってお祝いの演奏をしています。
それが学校行事(感謝祭を祝うこと)の中に組み込まれており,子どもたちにとって音楽などの芸術を学ぶモチベーションになっていました。
こうした授業の中で、ハワイの楽器を使ったり,歌を歌ったり,音楽を通してハワイという場所に親しむことができる活動がなされていて、それにより,ハワイの音楽をより身近に感じることができるのではないかと考えられます。
また,どのように音楽を教えていくかを考える際には必ず全体目標を意識しています。
その全体目標には人としての在り方についてと同時にどのように自分の学び方を獲得していくのかも考えながら作られているため,子どもたちは親しみを持ちつつ音楽を学んでおり、なおかつその学び方を一人一人が意識することができていました。
さらに,発達段階に応じて子どものことをとらえており,高学年の児童に対しては教師が授業の説明する一方,低学年に対してはパペットを使って説明をしているそうです。
そのほうが,直接教えるよりも子どもたちが興味深く聞き内容も入ってくると,音楽の先生は説明してくれました。
自分の表したい音を奏でるということ自体に多様性があり,それを達成するためのプロセスは個人によって違うと思います。
基本的な練習の方法に関しては教師がまず教えて練習するための土台を作ってあげることも大切ですが,それをもとに自分の音楽の学び方を確立し,そこから自己表現につなげていけることのほうが大切だと思います。
教師が多様な学び方を認めているからこそ,子どもたちに頭も体も楽器も使う音楽学習を通して,自分の学び方について考えさせていくことは,UDLの考え方とも合っているのではないかと考えました。
そして,こういったことを考えていけるのは,教師が音楽を楽しく活動的なものにしようという大きな意識のもと,学校での目標も意識して授業づくりをしていることが土台になっており、その結果として、音楽を楽しく学ぶこと,音楽の学びを通して自分自身のことについて意識できるカリキュラムになっているのではないかと考えさせられた訪問でした。