執筆:栗原 慎二
国立教育政策研究所の研究では、中学生男子の場合,いじめ加害に向かわせる要因は、不機嫌や怒りからいじめるわけではなく、友人からのストレスが圧倒的に大きいことを示唆しています。
つまり、けんかなど友人関係でうまくいかなかったことのストレスがいじめ加害につながっている可能性が高いということです。
さらに,その友人関係に符の影響を与えているモノは何かと言えば,実は「競争的な価値観」です。
「競争的」な価値観から「友人」ストレスに対しては、0.43という正の影響があります。つまり,学校が「競争的な価値観」で動いているときに、それが実は友人関係にストレスを与えいじめ加害につながるという構図が見えます。
ですので、短絡的な受験思考や勉強しなければならないというような思考、こどもに対する押し付けなどは、実は極めて危険があるということです。
また、競争的な価値観は、「勉強」「教師」「友人」「家族」のどのストレスを煽っており、教師ストレス以外の3つのストレスは「不機嫌怒り」を煽っています。
男子の場合はイライラしたからといっていじめたりはしませんが、イライラしている子どもがクラスに多く存在すれば学級風土は殺伐としたものとなることは予想できます。近年学力向上が言われていますが、短絡的な学力向上は実は極めて危険を伴うことがわかると思います。
では、逆に,ストレスを減らしているものは何でしょうか。実はそれは「サポート」なのです。教師からのサポートは教師ストレスを減少させ、「友人」からのサポートは友人ストレスを減少させ、「家族」からのサポートも家族ストレスを減少させるということがわかっています。つまり教師や友人、家族との関係が良くなれば、たとえ競争的な価値観があっても子どもたちはいらいらした状態にはなりにくいということです。
現実の中学生たちは、部活動のレギュラー争いや、大会発表のプレッシャー、受験勉強などの競争的な状況に置かれ、それが不機嫌や怒りにつながります。また、友人関係のストレスがいじめ加害につながったりします。しかし、クラスの中で友人同士が相互にサポートがあればいらいらは減少し、いじめ加害も減少するということなのです。いじめを許容しない空間は、暖かい関係と正義が支配する空間なのです。