監修:栗原 慎二
LGBT当事者が必ずと言って良いほど直面する問題、それがカミングアウトの問題です。カミングアウトとは、家族や友達、先生など周囲の人達に、自分がLGBT当事者であるということを打ち明けることです。今回は、そんなカミングアウトについてのお話しをしたいと思います。
ところで、LGBT当事者が、自分がLGBTだと認識する時期はいつ頃なのでしょうか?それは人によっても違いますが、同性に興味があると感じ始めるのは、異性に興味を持ち始めると言われる時期と同じで、思春期が多いです。さらに、自分のこころの性とからだの性の間に違和感を覚えるのはもっと小さいころからで、3~4歳のころから自分の性別は体の性別と違うと感じる人もいます。
LGBTの子どもたちは、学校生活を送る中で、「自分ってもしかしたらそうなんじゃないかな」と感じているということです。しかし、当事者の子が、学校で周りの友達や先生に相談することは中々できません。
カミングアウトができない最も大きな原因は、私たちがなんとなく感じている、LGBTに対する偏ったイメージにあります。「LGBT」「同性愛」と聞くと、どういった言葉を連想するでしょうか。「オネエ」「ホモ」「オカマ」「性同一性障害」「セクシュアルマイノリティ」「多様な性」等、様々だと思います。最近では、昔と比べるとLGBTに対する偏見も薄れており、LGBTを非難・中傷する声も少なくなっていますが、それでも、まだまだ「変わった人々」「特異なもの」というイメージは存在しています。
また、少なくなったとはいえ、LGBTに対する否定的なイメージは依然として存在しています。皆さんの周りでも、「ホモ」や「オカマ」、「そっち系」といった言葉がギャグやジョークとして使われていたりすることはないでしょうか?
同性同士が恋愛関係にあると、「怪しい関係」であったり、時には「禁断の・・・」などという言葉が使われたりすることもあります。さらに、LGBT当事者を「気持ち悪い」「生理的に無理」と感じる人の中には、いじめや暴行によって極端に排除しようとする人もあり、時には刑事事件や裁判沙汰まで発展することもあります。半年ほど前、とある大学生が、自身がLGBT当事者であることをカミングアウトした友人にばらされ、自殺をした事件は記憶に新しいかと思います。
このような、LGBTに対する否定的なイメージのことを同性愛嫌悪(ホモフォビア)と言います。ホモフォビアは、LGBT当事者の学校生活に大きな影響を与えます。
例えば、普段休憩時間などでクラスの男子が「おまえ、ホモかよ!」とふざけていう場面などはよく見かけられると思いますし、中には学校の先生からそういうことを言われた当事者もいると言います。
このように、周りがホモフォビアを持っていることで、自分がLGBTかもしれないと思っても、そのことを隠そうとしたり、否定したりしてしまいます。また、当事者である自分自身も、ホモフォビアを持っており、LGBTであることを否定的にとらえてしまうこともよくあります。(「内在化されたホモフォビア」と言ったりします。)
カミングアウトは、人によっては必ずしもしなければならないことでは無いでしょう。ただ、自分自身がLGBTであっても、「それは悪いことではない」と受け入れるようになることはとても大切です。まず、当事者や周りがホモフォビアを無くしていくこと、その上で、カミングアウトをするかしないかの選択を、当事者の子ども自身ができるようになることが重要ではないかと思います。その意味で、学校教育のなかでLGBT教育を行うことは重要であり、教員研修は必須です。
参考文献:『LGBTQってなに?セクシュアルマイノリティのためのハンドブック』2011年初版 ケリーヒューゲル著 上田勢子訳 明石書店