監修:栗原 慎二
LGBTについて話をする際に、一番初めに話さなければならないのが、「多様な性」についてではないかと思います。多様な性とは、性別が単純に男と女に分けられるものではなく、からだの性、こころの性、好きになる性と言った種類があるということです。
ここからはそんな「多様な性」について少し詳しくお話しをさせて頂きます。
1.多様な性について ~からだの性 こころの性 好きになる性~
〈からだの性〉
からだの性(生物学的性とも言います。)とは、生殖器の状態などから、生まれた時に生物学的に分けられる性のことです。多くの場合男性か女性かに分けられますが、そうでない場合もあります。(性分化疾患と言ったりします。)健康診断など、日常でよく聞かれる「性別」というのがこのからだの性にあたると思います。
〈こころの性〉
こころの性(性自認とも言います。)とは、「自分自身の性別をどのように認識しているか」ということです。こころの性はからだの性と必ずしも一致するわけではありません。
よく知られているところでいうと、タレントのはるな愛さんは、体の性は男性でしたが心の性は女性で、女性として生活をされています。
彼女のように、からだの性とこころの性が一致しない人をトランスジェンダー(T)と言います。ちなみに、性同一性障害と言われることもありますが、最近ではあまり使われません。からだの性をこころの性に合わせる性別適合手術を受ける場合に、「性同一性障害」の診断を受ける必要があるため、まだ名前としては残さざるを得ない状況ではあるそうです。
〈好きになる性〉
好きになる性(性指向とも言います。)とは、文字通りどういう人を好きになるかで決まる性別のことです。こころの性同様、男性であれば女性、女性であれば男性といったように、必ずしも異性を好きになるとは限りません。例えば、こころの性が女性でも女性を好きになったり、女性も男性も好きになったりする人もいます。
同性愛者(L)(G)・両性愛者(B)と言われる人がこれに当たります。最近では、お笑い芸人であるメイプル超合金のカズレーザーさんが、自身をバイセクシュアルだとテレビで公表したりしており、少し身近になったのではないかと思います。他にも、性別にとらわれず全ての人が恋愛対象となる全性愛者(パンセクシュアル)や、恋愛の対象が存在しない人(アセクシュアル)など、いろいろな好きになる性があります。
多様な性で最も重要なことは、性別は「男」と「女」に二極化されないということです。たとえば、好きになる性では、「8割ぐらい男性が好きだけど2割ぐらい女性が好き」という人もいますし、こころの性では、「自分のことは男性だと思っているけれども女性としての部分もある」という人もいます。人の性はグラデーション、はっきり分けることは難しいということです。
第2回では、学校で生活するLGBT当事者の子どもの話をする前段階として、多様な性について整理しました。LGBTの問題は、今後学校でも避けられない課題です。
参考文献:『LG?からだの性・こころの性・好きになる性』2014初版 薬師実芳(特定非営利法人ReBit代表理事)・笹原千奈未・古堂達也・小川奈津己(Rebit所属)著 合同出版