監修:栗原 慎二
皆さんは、LGBTという言葉をご存知でしょうか?
最近はメディア等において取り上げられる回数も増え、様々な場所で見聞きする言葉になってきていますよね。LGBTとは、女性同性愛者であるレズビアン(Lesbian)、男性同性愛者であるゲイ(Gay)、両性愛者であるバイセクシュアル(Bisexual)、性同一性障害ともいわれる、こころの性別とからだの性別が一致しないトランスジェンダー(Transgender)の頭文字をとったもので、性のマイノリティを指す言葉として用いられています。
現在、日本にはおよそ5%~7%のLGBT当事者がいると言われています。
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実際の事例です。
A君(?)が小学校に上がる年齢になり、ランドセルを買うことになりました。A君は両親に連れられてランドセル売り場に行ったのですが、なんと選んだランドセルがピンク!
両親はいじめなどにつながることを恐れ、いろいろ言って聞かせて無難な色を選ばせました。
ただ、それでコトはすみませんでした。筆箱やえんぴつなど、ことごとく女の子の好きなキャラクターものを選ぶわけです。6年間隠し通すことはできないと観念した両親は、学校を訪ね、子どものことをていねいに話し、対応をお願いしました。学校は了解しましたということでしたが、それでも理解のない教員から「男なんだから」という指導がなされたことや、「男のくせに」といういじめやからかいもあったようでした。
それはA君(?)にとっては相当につらいことだったようで、登校しぶりになったこともありました。このケースでは、幼稚園時代からA君(?)のことを理解し、仲良くしてくれる女友だちがいたので不登校にまでは至りませんでしたが、対応の難しさを示す事例と言えるでしょう。
A君のような子どもが学校にいた場合(実際、いるのですが)、いろいろな難しさが生じます。
たとえば、体育の時間の着替えをどうするのか。
トイレをどうするのか。制服や体操着は?
中学校なら男子は丸刈りというのは許されるのか。
修学旅行で風呂をどうするのか。
LGBT調査をかけたほうがいいのか。
それでわかったらどうするのか。
そもそもそんなプライバシーを暴くようなことをしていいのか…など。考えなければならない問題はいろいろあります。
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先ほどの数字に戻ります。
5~7%という割合を学校のクラスに当てはめると、1クラスに約2~3人ほどの当事者がいるということになります。しかし、学校の先生がこの数字を見ると、疑問に感じられることがあると思います。「今までそんな子に会ったこと無いけどなあ。」「うちのクラスには多分いないけどなあ。」と思われる先生も多いのではないでしょうか?
実際、例であげたA君のような事例はまれで、多くは表面化しません。実はこれがLGBT当事者支援の1つの大きな課題となっています。
詳しくは後々説明する予定ですが、LGBT当事者であるかどうかを先生が見極めることは難しく、また、LGBT当事者の子どもたちが、周りの友達や先生、家族に自分が当事者であるとカミングアウトをすることも決して簡単ではありません。こうした現状の中で当事者の子どもたちは、LGBTに関する様々な悩みを抱えており、それがいじめや不登校に発展するケースもあります。
ただ、「カミングアウトしない場合は配慮しなくてよい」「うちにはカミングアウトしている子どもはいないから特段の配慮はしてくてよい」のでしょうか。そんなことはないでしょう。カミングアウトしていない子どもが苦しんでいるかもしれないとすれば、「カミングアウトしている子どもがいる・いないにかかわらず、配慮のある教育を行う」ことが重要だといえるでしょう。
このコラムでは、LGBTとはどういうものか、また、どういう悩みを抱えているのかを各回に分けて皆さんにご説明していきます。そして、LGBT当事者の子ども達のために、学校でどういった支援や教育ができるか、少しでも多くの先生方とともに考えていくことができればと思います。