執筆:栗原 慎二
7月に学校回避感情が高いと、9月には学校に戻らない
以前、私が行った調査では、2学期から不登校になる子どもは7月の段階で「友達からの疎外感」を高く感じている傾向にありました。今回の調査結果と併せて考えると,7月の段階で「友達からの疎外感」を感じている子どもは、それによって「学校回避感情」が高くなっており、その結果、2学期になって登校しにくくなっていると可能性が高いと思われます。一学期の間は「学校回避感情」を抱えながらもなんとか踏ん張って学校に行っていたけれども、夏休みで心理的に一休みしたあと、2学期が近づくにつれて「学校に行きたくない」という思いが募り、結果として不登校になったのだろうと推測されます。
長期休みへの入り方を大事に
確かに,9月の夏休み明け,5月の連休明け,1月の冬休み明けは,不登校が増える時期です。この時期に不登校を生まないためには,「楽しい終わり方をして休みに入る」ということが重要だと言うことです。それが学校回避感情を持っている子どもが「次は何かが変わるかもしれない」という期待を持って休み期間を過ごすために必要なことだからです。
子どもの期待を裏切らない
なかには高い学校回避感情をもちながらも、2学期の最初は登校する児童生徒もいます。彼らは「2学期は何かが変わるかもしれない」という期待の気持ちをもって、頑張って登校しているのでしょう。しかし、期待をもって学校に来てみたものの、その期待が裏切られる結果となったとき、子どもたちは力尽きて不登校になっていくのかもしれません。これは、昨年度まで不登校だった子どもが、新年度の初日に登校するときについてもそうです。
長期休み明け,多くの子どもは成長し,教師はその姿を見てうれしく思ったり,たくましく思ったりするものです。ただ,しんどい体験をしてきた子どももいるでしょうし,子どもの関係性にも変化が生じているかもしれません。宿題が終わらなくて不安を抱えている子どももいるでしょう。9月1日は子どもの自殺が最も多い日であることはこのことを示唆しています。
新しい環境への適応は,子どもにとっては私たちが思っている以上に大変なことなのです。そのしんどさや戸惑いのサインを見逃さない注意深さと,ちょっとした笑顔とさりげない言葉をかける感性が教師には求められます。
(本稿は,「教育と医学」(2016年9月号)に「二学期の不登校予防」として掲載したものに加筆修正したものです。)