執筆:栗原 慎二
今回の調査では、ある意味矛盾する結果が出ました。そのことを少し丁寧にみていきます。
学校回避感情が強いからと言って,欠席日数が増えるわけではない
これまでの研究をみると,「学校回避感情と実際の欠席行動との間には関連がないとする先行研究があるわけです。
ただ,直感的には「学校がイヤだから休むんじゃないの?」と思いますよね。
そこで,「ハイリスク群」の子どもたちに対象を絞れば,「学校回避感情と実際の欠席行動には関連があるのではないか」という仮説をたてて,それを検証しようとしたわけです。その結果ですが,結局,学校回避感情と実際の欠席行動の間には,予想に反して相関関係は見られなかったわけです。
一学期の欠席3日は「学校がイヤ」というサイン
そこで別の分析をしてみました。学校回避感情の強い「ハイリスク群」の実際の欠席日数を調べてみたわけです。そしてその欠席日数の傾向を「一般群」の欠席日数と比べてみたわけです。
その結果、「ハイリスク群」は、「一般群」に比べて「0日欠席」が少なく、「3日以上欠席」が多いという結果となりました。このことは,1学期の段階で欠席日数が3日に達する子どもは,潜在的な「ハイリスク群」である可能性が高く,一学期のうちから「多様なつまずき」を抱えていることを示唆していると考えられます。
なお,「ハイリスク群」の子どもは1学期中に3日休むという意味ではありません。欠席日数0~2日の子どもももちろんいるのですが,全体としてみると,0日の子どもは少ない,そして3日以上の子どもが多いということです。つまり、「ハイリスク群」は「一般群」と比べて「学校回避感情」を強くもっていて,「欠席行動」も多くとっています。しかし,その「学校回避感情」と「欠席行動」には関連がないという結果になったわけです。
矛盾するような結果はどう考えたらいいのか
私は、「ハイリスク群」の中には、「学校回避感情」をもっていて、「欠席行動」をとる子どもたちもいるが、その一方で、「学校回避感情」をもちながらも,なんとか踏ん張って「欠席行動」をとらずに学校に通い続けている子どもたちがいるのではないかと考えました。つまり,「欠席行動」をとることで不登校の危険信号を出す子どもたちもいれば、学校回避感情を持ちながらも,欠席行動を取らず,なんとか踏ん張っている子どもたちもいるということだと思います。そう考えますと、やはり「学校回避感情」を子どもたちに感じさせないようにすること、「学校に行きたい」と感じられるように支援していくことが重要だと思います。それは当たり前と言えば当たり前なのですが,生活リズムを整えること,学校が楽しいこと,友だちと楽しく過ごせていることなのです。
不登校は指導ではなく支援を
今日、学校では,「合計で3日欠席に達したら家庭訪問」や「3日連続欠席したら家庭訪問」など、3日欠席を基準にして子どもたちに介入をするという取り組みがよく行われています。これらは、今回の結果からすると,子どもたちの不登校の危険信号にかなった取組であることがわかります。
ただ,そのときに注意したいのは,家庭訪問は子どもを指導するために行くのではなく,つまずきを抱え苦戦している子どもを「支援するため」であるということを意識したものでなければならないと言うことです。
(本稿は,「教育と医学」(2016年9月号)に「二学期の不登校予防」として掲載したものに加筆修正したものです。)