執筆:栗原 慎二
不登校のハイリスク群
不登校がなぜ起こるのかをみるために,まず,小学生と中学生の学校生活についてのアンケートを実施しました。
また, 3学期の時点で教師が「不登校を危惧しているハイリスクの子ども」を抽出してもらい,そのハイリスクの子どもが1学期の時点でどんな状態であったかを調べました。
それをつかむことで1学期のうちに早めにサインを読み取る方法を考えたかったからです。
調査の結果,「ハイリスク群」として,小学生67名,中学生50名が抽出されました。これは一学級当たり約1名ということになります。
そしてこの「ハイリスク群」の子どもたちの特徴を、それ以外の「一般群」の子どもたちとの比較などを行いながら分析をしました。
「ハイリスク群」の学校生活でのつまずきと学校回避感情
まず,「ハイリスク群」と「一般群」の間に、学校回避感情に差があるか、また学校生活の様々な要素におけるつまずきに差があるかを調べました。
その結果、小・中学生ともに,調査したすべての項目(「感情理解スキル」「自己調整スキル」「友人魅力」「学校魅力」「学校規範」「家庭生活」「学校回避感情」)で差が見られました。
小学生の場合は、「学校規範」と「学校回避感情」の差が、中学生では「友人魅力」と「学校回避感情」の差が特に大きく見られました。
この結果から、「ハイリスク群」は「一般群」に比べて,1学期の段階で既に学校生活の様々な点でつまずきを感じており、小学生の場合は特に「なんで学校に行かなくてはいけないのか」という思いが強いこと,中学生の場合は「友人に対する魅力を感じる程度が低い」ということがわかります。
そしてその結果,「学校に行きたくない」という学校回避感情を強くもっていたことがわかります。
また,両群の比較ではなく,数値だけでみると,小学生・中学生共に,「クラスがイヤだ」(クラス回避感情)と「学校に行く理由が分からない」(学校規範)という思いが強いことが分かりました。
ではなぜクラスがイヤで学校に行く意味が分からないかというと,学校に魅力を感じない,友人に魅力を感じないということが中心でした。
小学生の場合は加えて生活リズムをきちんとできない(自己調整スキル)ことが影響していました。
押さえるべきポイント
以上のことを踏まえると,「早寝早起き朝ご飯」という言葉がありますが,「学校がイヤだ」とならないためには,小学生の時は,生活リズムを整えることがそれなりの重要性をもっていると思われます。
そのうえで,学校が楽しいこと,友だちと楽しく過ごせていることが,結局は重要なのだ,ということです。
(本稿は,「教育と医学」(2016年9月号)に「二学期の不登校予防」として掲載したものに加筆修正したものです。)