執筆:栗原 慎二
「みんなちがって、みんないい」をベースに“変えようとしない”特別な支援
まず、障害の特性を簡単に“変える”ことはできません!
特性を変えようとするのが特別支援教育ではありません。
教師のこの意識改革が重要です。
障害であることを理解し、その子が現実社会で生きやすいように支援しましょう。
発達障害は脳機能の「障害」〝まずは理解し、受け入れよう〟という意識をもつ
「発達障害」には、ADHD(注意欠陥多動性障害)、自閉症、アスペルガー症候群、LD(学習障害)など、様々な種類、症状があります。そして、そのような障害をもつ子がクラスの中にいることで、授業がうまく進行できなかったり、その子をめぐるトラブルが多かったりで、教師が頭を悩ませている話はよく聞きます。
「どうやって指導したら、この子を変えることができるだろう?」と試行錯誤したり、「この子さえいなかったら、学級はうまく回るのに」と密かに嘆いたり…。「そういう子を変えるためには、こうしたらいいですよ」と、変えるためのテクニックを紹介する記事なども見かけます。
でも、ちょっと待ってください。
そもそも、「特別な支援を必要としている子どもたちを、〝変えたい〟と思っている自分が〝おかしい〟」と気付いてください。なぜなら、発達障害は生まれつきの脳機能の障害であって、年齢とともに程度が軽くなることはあっても、根本的には治らないのです。そのことを教師は強く自覚する必要があります。
発達障害の子に「変わったほうがいいよ」と言うのは、目が不自由な子に「目が見えるほうがいいよ」と言っているのと同じなのです。ただ、身体障害の人は、見た目ですぐにわかるし、しかも、誰にも迷惑をかけません。「かわいそうだ」と思います。
ところが、心の発達障害の子は、見た目でわかりにくいうえに、往々にしてクラスの子に攻撃的になってしまい、みんなを怒らせたり、迷惑をかけてしまうことに。
そのために、「かわいそう」と思われるどころか、非難を浴びてしまうことになります。でも、どちらも同じ「障害」なのです。障害をもっている子に、「あなたの障害は問題だから変わりなさい」と言えますか?「障害を変える必要はない」「その子が悪いのではない」という大前提にまず立ってください。教師の意識を変えることが、〝支援の第一歩〟です。
まとめ【教師が意識を変える】
・発達障害は「脳機能の障害」なので簡単には治らない
・その子を変えようと思っても「変えられない」
・まずは「教師が変わる」ことが第一歩!
この記事は、小学館『小三教育技術』2017年10月号(構成・文/谷口のりこ )をもとに一部修正して掲載しました。