理解的支持的風土をつくるために学級の意識を変える具体策

執筆:栗原 慎二 教師の意識をクラスに浸透させて、仲間による支援「ピアサポート」を 教師が「自分が変わることが大切だ」と意識したら、次に取り組みたいのは「学級の子どもたちの意識を変える」ことです。発達障害の子には、物理的 … “理解的支持的風土をつくるために学級の意識を変える具体策” の続きを読む

執筆:栗原 慎二

教師の意識をクラスに浸透させて、仲間による支援「ピアサポート」を

教師が「自分が変わることが大切だ」と意識したら、次に取り組みたいのは「学級の子どもたちの意識を変える」ことです。発達障害の子には、物理的環境、人的環境を含めて、「環境が優しくなる」ことが最大の支援になります。

NG例えば、車椅子の人に対して、「階段を上るように努力しなさい」などとは言わず、エレベーターが設置されるのと同様です。 発達障害の場合、学習面、コミュニケーション面において様々な困難を抱えていて、失敗も多くなります。このために非難を受けることも多くなり、「自尊感情」はますます低下するばかり。それが「二次障害」を引き起こし、学習意欲がなくなったり、不登校になることもあります。

「俺なんて生まれてこなければよかった」
「どうせ、みんなは僕のことなんてキライなんだろう」
……そんな思いから、相手を試すためにキレることもあります。それを「○○くんは障害があるから……」などと説明するのはもちろんNG。「〇〇くんが悪いのではない」と理解できる指導が必要となります。

「得意なこと」「不得意なこと」グループづくりで相互理解

例えば、その子の「衝動性」を一つの「不得意なこと」として、クラスの子どもたちが理解できるように、こんなことをやってみます。

感情コントロールまず、「みんな、自分の得意なこと、不得意なことがあるよね」と、挙げさせます。最初は、「算数のできる人、できない人」など一般的なことから始め、「友達に言いたいことを言える人、言えない人」など内面的なことへ。そして、グループ分けをしていきます。 「じゃあ、言いたいことが言えないグループの人に聞くよ。どうしてくれたらうれしい?」と問いかけると、「〝どうしたの?〟と聞いてくれたら嬉しい」などの答えが返ってきます。

みんなは、「そうだったんだ」と理解でき、サポートが生まれます。 同様に、「カッとなると抑えられない人、抑えられる人」というグループ分けをします。その中で、「〇〇くんはカッとなると、我慢するのが〝苦手〟なんだね」とフォローしていきます。すると、クラスに中に、「そっか、苦手なんだ。じゃあ、カッとさせないように気を付けてあげよう」という〝理解的支持的風土〟が生まれてきます。

「怒ったこと、ある人?」感情コントロールの授業

「怒ったあと、どうなる?」と子どもたちに聞いてみると、「嫌な気持ちになる」「スッキリしない」という意見が出ます。そこで、先生は「怒っていい時もあるよね。でもすぐにカッとすると後悔することが多いよね」と、〝アンガーマネジメント〟を行います。

 「怒る前にはどうなる?」と聞くと、子どもたちは、「無口になる。イライラする。ドキドキしてくる」などと答えてくれるので、その子にも聞いてみます。「何回も注意されるとキレそうになる」と答えたとすれば、他の子たちは、「ああ、そうか。何度も注意するのはやめよう」と思うわけです。本人も自分が怒るときのプロセスに気付くと、怒りの途中で〝降りる〟ことができます。

 

特別な支援のための3つのSTEP

特別な支援のための3つのステップ

この記事は、小学館『小三教育技術』2017年10月号(構成・文/谷口のりこ )をもとに一部修正して掲載しました。

『AISES 学校教育開発研究所』は子どもと学校の支援、教育に携わる人材育成を行う ことを目的とした団体です。eラーニングや直接研修などを通して、発達障害支援を含む学校教育現場の様々な課題に対応する理論・実践例・教材・教具等を提供します。活動の参加や詳細は、HP https://aises.info/ または☎ 082-211-1030 まで。