いじめ対応


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いじめ対応Q&A理論編

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Q1 いじめとは具体的にどのようなものを指しますか?

A1 日本では,2006年に文部科学省がいじめの定義を更新しました。

文部科学省(2006)によれば,いじめは「当該児童生徒が,一定の人間関係のある者から,心理的,物理的な攻撃を受けたことにより,精神的な苦痛を感じているもの」です。

つまり,被害者がいじめられたと感じたらいじめです。また,いじめの方法は,「悪口を言う」「暴力をふるう」のように,目に見える直接的なものから,「仲間はずれにする」「無視をする」のように,目に見えない間接的なものまで含まれます。さらに,いじめの場所は,学校の内外を問いません。

また,日本のいじめ研究の専門家は,「意識的に,あるいは集合的に」という表現をしています (森田・清水,1994)。ここでいう集合的にとは,「非意図的に」と捉えるとよいでしょう。加害者は意図せずにいじめをしていることもある。それもいじめだということです。時に加害者は「自分はいじめていない」と本心から発言していることもあるのです。

また,2006年以前の文部科学省の定義では「継続的に」という表現がありましたが,これがなくなった背景には,継続的に認知することが難しいということを物語っています。

Q2 いじめは犯罪ではありませんか? 中学校の教員ですが,生徒の中に陰湿ないじめをする者がおり,非行化しております。ただ,それほどの悪意を感じないこともありますし,こちらも判断に悩む場面が多々あります。犯罪との線引きや,他機関との連携など,対応はどのようにしたらいいのでしょうか?

A2 深刻な場合,犯罪に該当する場合があります。

まず,いじめは人権侵害行為であり,場合によっては犯罪と認められ,懲役や罰金等の刑罰が下されるケースもあるということを教職員・生徒が認識する必要があります。具体的な例を挙げますと,「アトピーが汚い」「顔が醜い」「部活に邪魔」などが発せられた,部活内での言葉によるいじめの例では,被害者への慰謝料として56万円が裁判所より言い渡されました。

加害者の生徒も自分の生徒ですから,時には「本当は悪い子ではない」「悪意はないから」とかばいたくなることもあるかもしれません。ただ,被害者の視点に十分に立てなかった結果,結果として教師がいじめに荷担した形になった事例を皆さんもご存じではないでしょうか。

いじめが発覚した際は,学校の管理者はもちろん,教育委員会に連絡し,一人で抱えないことが重要です。

対応としては,まずは被害者を生まないように,もしくは被害者を守るための枠組みを作りましょう。具体的には,何が人権侵害行為に当たるかを明確に示す必要があります。次に,そのようなことが発覚したら,被害者として,目撃者として,どうすべきかを示しましょう。その後,加害者が生まれないように,ストレス対処とスキル学習,さらには家庭連携が必要になっていくでしょう。それでも状態が改善しない場合には,警察との連携も視野に収める必要があります。

Q3 いじめの原因は何ですか?

A3 いじめは複数の要因が複雑に関わっています。

様々な研究の結果では,「加害者要因」と「集団要因」が大きく関与しています。「加害者要因」には,「ストレス」「攻撃性」「社会的スキルの欠如」「認知の偏り」「欲求不満」などが挙げられます。また「集団要因」では,「競争的」「非理解的」「友人関係・仲間意識の希薄さ」「相互支援力の不足」などが挙げられます。部活動での競争的環境や,受験ストレスがいじめの背景になることは十分に考えられます。こうした多面的な要因を考えに入れて,予防的な視点から部活動経営や学級経営を行っていく必要があります。

Q4 昨年学級崩壊になったクラスを引き継ぎました。クラスの雰囲気は,からかいなどがあり,いつ深刻ないじめになるかわかりません。今後,どこから手を付けたらよいでしょうか?

A4 学級崩壊の中心人物だけでなく,全体へのケアも重要です。

学級崩壊になったクラスを引き継ぐことはとても大変ですね。先生はまずその力を認められたために任命されたはずですので,自信をもって,でも一人では抱え過ぎずにやっていきましょう。

学級崩壊の修復のために,考えるべき視点はその崩壊の中心人物だけでなく,全体へのケアです。

まず学級崩壊を経験した学級では,児童生徒が休みがちになりやすく,そわそわ・ガヤガヤしがちです。それは,一度秩序が壊れたため,みんな不安だからです。そこで,この不安を取り除くためにも,新しい学級として児童生徒がどう過ごすことが求められているか,何をしていいか,何をしてはいけないかなど,「安心安全の枠組み作り」をすることが必要となります。例えば「授業の発表中」「授業の班活動中」「休み時間中」などの時間帯ごとにまとめると,児童生徒はわかりやすいでしょう。クラスで具体的に話し合って決めると児童生徒も身が入り,守ろうとします。まずは一つ,学級の多くの子どもが守れるレベルのルールを決めるといいでしょう。それができたらきちんと認めて次へと進みます。

次に,学級崩壊を経験した学級で再発防止のために,学級崩壊の中心人物とその予備群が負の行動をしないようにする必要があります。彼らはストレスを抱えており,エネルギーを適切に発散する機会を見つけられないことが課題です。そこで,ストレスを抱える代わりにできる行動例を具体的に示すことが有用です。たとえば,授業がわからずストレスが溜まっている生徒が多い場合は,授業中に隣近所と相談できる時間をこまめに設定するとよいでしょう。また,班活動では,発表者や司会進行などの役割だけでなく,審判のような,みなの意見を聴いて一番わかりやすい意見を決める役割なども設定すると,本人は答えを自分だけの力では出せなくてもよく,学習に参加しやすくなります。その他にも,宿題は発展や予習だけでなく復習する内容からも選べるようにするなどの工夫ができます。

また,重要なことは壊れた信頼関係を再構築していくことです。定期的な相談活動を行い,子どもの声と情報を大切にすることで,生徒たちは先生が心配してくれている,気にかけてくれている,相談できる信頼できる存在だと少しずつ心を開いてくれます。

いじめ対応Q&A実践編

今後掲載予定です。

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