執筆:栗原 慎二

大人はいじめを解決できるか

少々古くて申し訳ありませんが、1994年から1995年にかけて文科省が「児童生徒のいじめ等に関するアンケート調査」を行いました。その調査で、「いじめを受けたことがある」と回答した児童生徒に対してさらに、「担任のいじめへの対応の結果どうなったか」と聞いたところ、実際に解決しているのは4割台に留まっています。つまり半数以上のいじめは継続したり、なんらかの形で解決していなかったり、場合によっては一層ひどくなるということも起こっていました。

このような状態では、子どもからすると,先生に「いじめられている」と言っても状況はよくならない、もしくはひどくなるかもしれないということになるので,一種のギャンブルのようなものです。親にいじめを報告しても、先の数値でも分かるとおり,子どもは子どもなりに精一杯伝えたとしても,親が感度よくそれを察知するとは限りません。こうしたことからすれば,親や教師が「いじめがあったら大人に言いなさい」というのは正論であり,実際そうすべきだとは思いますが,その一方で、実際にはなかなか難しいのです。

 

いじめは、いつ、どのように起こる

いじめの様態や時間ですが、「仲間外れ・無視」などの間接的ないじめは女子に多く、「殴る・蹴る」といった直接的ないじめは男子に多いと言うことができます。いじめられる時間帯については、最も多いのは休み時間で6~7 割、小学校では登下校時及び放課後、中学校では部活中が多いです。また、転校がいじめのきっかけになることもあります。

ここから分かることは、実はいじめは,休み時間や放課後、部活動中や登下校時など、教師の目が届かない時間帯に,そして,大人がいない場で起こっている可能性が高いということです。大人がいない時間帯と場所でいじめは起こり、いじめられていることを教師に言っても止まらない,もしくはひどくなる、親に伝えてもなかなか気付いてもらえない。このような状況の中で、子どもたちは大人に言っても無駄なのではないかという思いを抱きながら、有効な手立てを打てず,徐々にいじめが深刻化してしまうということがわかります。

 大人はいじめを解決できるか

世界の教師はみんな悩んでいる

こうした状況は実は日本だけではありません。これは一例ですが,あるカナダの学校では,教師の85%が,「いじめを止めている」と回答しているにもかかわらず,生徒は35%しかそれを認めていませんでした。恐らく生徒から見ればいじめが起こっているのに教師がそれに気付かないか,気付いても有効な手立てを打てていないことが,この数値の差となって現れているのでしょう。そして有効な手立てが打てていないことは,教師の99%が責任を感じながらも,自信がないこともうかがい知ることができます。また、その教師の多くは研修の必要性も感じています。

 

大人はいじめになかなか気が付かないということをわかっていただけますでしょうか。だとすれば、大人が監視の目を光らせて、完全にいじめを把握するということを前提にした対策は、そもそも最初から破たんしていると考えたほうがよさそうです。

『AISES 学校教育開発研究所』は子どもと学校の支援、教育に携わる人材育成を行う ことを目的とした団体です。eラーニングや直接研修などを通して、発達障害支援を含む学校教育現場の様々な課題に対応する理論・実践例・教材・教具等を提供します。活動の参加や詳細は、HP https://aises.info/ または☎ 082-211-1030 まで。