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アセス対応Q&A理論編

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Q1 「アセス」ってなに?
問題行動の背景の多様化

A1 学校適応感尺度ASSESS(以下,「アセス」)は子ども達の「学校適応感」をアセスメントするために開発しました。子どもがどんなことで,どの程度困っているのかを測定しています。

「最近の子どもは難しい」「何を考えているかわからない」こんな言葉を近年,職員室で頻繁に聞きますよね。また,いじめや不登校,校内暴力といった問題行動等は依然として発生件数の減少が見られません。

その原因の1つに,子どもたちの抱える背景が多様化していることが挙げられます。

 

学校適応感尺度ASSESS(以下,「アセス」)はそのように多様な背景を持つ子ども達の「学校適応感」を測定するために開発された尺度です。

Q2 「アセスメント」って何?
的確な支援のためのアセスメント(見立て)

A2 「アセスメント」という言葉にはあまりなじみがないかもしれません。学校などで使われる言葉で言えば,「見立て」や「子ども理解」ということになります。

この「見立て」がずれていると効果的な介入はできません。皆さんがお医者さんにかかる時のことを考えてみるとよくわかると思います。「なんとなく,頭が痛いなぁ,お腹も少し痛むし。そういえば昨日食べたものが悪かったかも・・・?」そう思いながら病院に行き,診察を受けた段階で,お医者さんが問診や検査等何もせずに「あ,今インフルエンザが流行っているから,たぶんそれだね。インフルエンザの薬出すからね」なんて言われてしまったら?みなさんはその診断を信用できるでしょうか。

お医者さんの指示に従おうと思うのは,医師がきちんと問診し,必要な検査もおこない,そのデータを医学的な専門知識に照らし合わせて症状の原因を見立てて処方箋を書いたり措置をしてくれたりするからですよね。そして,そのようなきちんとしたアセスメントがあるからこそ,「検査の結果,風邪ではなく,昨日食べた○○が原因の食中毒だから,食中毒に対処する薬を出そう」という医師の介入が効果を発揮し,完治に向かうわけです。

教育についても同じことが言えます。1枚目のスライドにあるように,例えば「宿題をやってこない(なかなか提出が整わない)」子の背景の見立てがずれていれば,介入は功を奏しません。

お医者さんの例に照らして言えば,「アセス」は検査用のツールの1つと言うことになります。ただ,お医者さんもたった一つのデータ,たとえば熱があると言うだけで「風邪だ」と決めつけることはしません。複数のデータを集めて総合的に診断します。

「アセス」も同じです。「アセス」は2万人以上の子供たちのデータを元に開発していますので,信頼性は高いですが,それだけで断定はできません。先生方の日頃の観察や子ども(あるいは保護者も)とのやり取りで蓄積した情報,学業成績,身体表現や美術作品の様子,日記,他の教職員や地域の方々からの情報等・・・多面的に情報を収集し,それらと併せて総合的に判断することが必要です。

Q3 「学校適応感」って何?
情報収集:学校適応感尺度

A3 「学校適応感」とは,「学校適応」に対する「子どもの認識」です。

簡単に言えば「子ども自身が学校の中でうまくやれていると思っている感覚」ということになります。そのため,当然「外から見た子どもの様子=学校適応」とはズレが生じる場合もあります。

どちらが大事か?と問われればもちろん学校適応も学校適応感も両方が良好であることが大事なのですが,子どもの問題行動等を予防する,という意味では子どもの「学校適応感」が良好である事が大事です。

なぜなら,「自分は学校でうまくやれている」と思っている子どもは,学校で問題を起こしにくいからです。友だちが好き,先生が好き,勉強が好き,こんな子は学校で問題を起こす可能性は低いでしょう。

子どもの「学校適応感」を良好にすることが,予防的・開発的生徒指導には効果的です。

Q4 「アセス」は何を測っているの?
学校適応感尺度でみているもの

A4 学校でうまくいくために大事なことは,「①いい友だちがいる」「②いじめられたりしない」「③勉強がうまくいく」「④先生とうまくいく」ことが重要であることが,これまでの学校適応感研究からわかっています。

また,「先生や友人とうまくいく」ためには「⑤思いやりを行動化できる(校社会的スキル)」ことも大事です。こうしたことが全体としてうまくいけば「⑥生活全体がうまくいく」ことになります。

「アセス」では,子どもの「学校適応感」をこの6つの側面から測っています。また,それが図の中の吹き出しに書かれているものです。

Q5 「アセス」の学級分布票はどう見ればいいの?
アセス学級分布票

A5 「アセス」は,Microsoft Excelで動作するように作られています。

学級で子どもたちに質問紙に記入させ,そのデータを指示通りに打ち込むと,図のような「学級分布表」と各子どもの学校適応感を表した「個人表」が出力されます。分布表では縦軸が対人的適応,横軸が学習的適応を表しています。

つまり,プロットが下にあればあるほど対人関係の適応感が悪く,左に行けば行く程学習に対する適応感が悪いということになります。

図の右側にある棒グラフは,各側面について学級内の子どもたちがどのように回答しているかが把握できるようになっています。このグラフの色の赤とオレンジの割合が大きい側面については,学級全体への介入が必要と判断できます。例えば図の学級では「非侵害的関係」の棒グラフの赤やオレンジの割合が大きくなっています。ですので,この学級の子どもたちの多くが「いじめやからかいがある」等と感じていることになりますので,その部分に介入をしていくことになります。

また,「アセス」の大きな特徴として,「生活満足感」という子ども自身の生活全般に対する適応感を測定している事をお話ししましたが,その「生活満足感」に赤信号がついてないかどうかがこの学級分布表で一目で分かるようになっています。各個人プロットに,赤やオレンジ,青,緑,といった色がついています。これが赤色やオレンジになっているということは,学校内での適応感はどうあれ,その子どもは「生活が楽しくない」「自分に満足できない」と感じているということになり,早急に支援が必要な子どもだと考えられます。

Q6 「アセス」の個人票はどう見ればいいの?

A6 個人票では,各個人の適応感がグラフになって表されます。そのグラフや子どもの様子,実際の学習成績等多面的な情報を元に子ども理解を深めていくということになります。「アセス」の6側面は相関していますので,この関連も含めて子ども理解を進めていくことになります。

Q7 「アセス」のよいところは?

A7 いろいろあります。よいところは以下の点などです。

  1. 安いです。定価は2500円(税別)で,何度でも,何人でも利用できると言うことです。500人の学校で1年間に3回使えば,一人一回あたり1.7円です。
  2. 結果はすぐにその場でみることができます。本にはすぐに使えるCD-ROMがついています。結果を入力さえすれば,すぐに分析結果が出てきます。30人学級であればパソコンに向かって30~40分もあれば大丈夫でしょう。
  3. 子ども一人でも実施可能です。ですので,保健室登校や相談室登校の子どもであっても,すぐに実施できます。
  4. 子どもが何で困っているのかが非常にわかりやすいです。支援の必要性の緊急度もわかるので,どこから手をつければいいのかが理解できます。

Q8 逆に悪いところは?

A8 開発者としては悪いところとは思っていませんが,「先生方にいやがられるだろうな」と思うところはあります。それは以下の点です。

  1. 入力を先生がしなくてはならないです。ただ,質問項目は34項目ですから実際の入力は一人1分もかかりません。また,たとえば1点と5点にしかチェックをしない子どもがいたりします。白かクロかみたいな極端な思考様式を持っているわけです。またほとんど3点にしかチェックしない子どももいます。ひょっとすると自己理解ができなかったり,決断のできない子どもかも知れません。そういうことが入力することでわかります。
  2. 解釈は先生にゆだねています。「子どもの状態の見立ては,アセスの結果だけではなく,その他のいろいろなデータや先生方の観察を含めて総合的に行ってほしい」というのが私達の立場です。ですから,アセスの結果だけで「Aさんはこのように見立てることができます」というような結果の出し方はしていません。アセスで提示するのは「子どもが6領域のどこで,どの程度困っているのか」と言うことだけです。その原因は先生方が頭をつきあわせて考えて,子ども理解を深めてほしいと考えています。
  3. 「先生は・・・」という教師サポートの項目が教師が評価されているようで嫌だという先生がいます。ただこれは「先生がサポートしていない」ことを示してはいません。ほとんどの先生方は一生懸命ですから。ここでみているのは,「先生のサポートが子どもに届いているかどうか」です。これをみることで「今の支援の方法で間違っていない」とか「支援の仕方修正した方がいい」ということがわかります。

 


アセス対応Q&A実践編

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Q1 がんばってきたのに教師サポート得点が低くてショックです。
昨年度、学級崩壊でグチャグチャになったクラスを引き継ぎ、1学期間,ともかく子どもたちとの信頼関係を作るために頑張ってきました。学級も何とか落ち着きを取り戻したので、1学期末にアセスを実施したところ、教師サポート得点平均が47で全国平均以下でした。分布は、青が40%、緑が50%、オレンジが10%、赤0%でした。結構ショックで、「これまでの取り組みでは教師としてのサポートは足りなかったのか」と落ち込みました。これはどう解釈したらいいのでしょうか。

A1 学級崩壊をしたクラスでは,教師と子どもの信頼関係が壊れていることが多いです。一度壊れた信頼関係は簡単には回復しませんので,1学期末に教師サポート得点には,前年度の教師不信感が強く影響していると考えられます。

仮に昨年度末にアセスを取っていたとすれば,オレンジと赤で40%前後はあったのではないかと想像されます。それが現状の先生の学級は,オレンジ10%ですし,赤もいません。

赤とオレンジの合算は全国平均で17%程度ですから,前年度の学級崩壊を勘案すると,1学期間で子供たちとの関係は相当に良くなっていると考えられます。

つまり50%を占める緑の子供たちは,「徐々に教師不信から回復してきている子供たち」であると思われます。子供たちの様子を丁寧に観察しながら,今の方向で取り組みを進めていけば良いのではないかと思います。

Q2 「アセスの使い方・活かし方」(ほんの森出版)を一冊購入致しました。
付属のCD-ROMを使用して学校全体でアセスを使用して構わないでしょうか?別途、複数購入したり、申請したりする必要はあるでしょうか?

A2 問題ありません。

Q3 アセスを実施する上で,最低限,押さえておかなくてはならないことは何ですか。

A3 研修をすることです。

アセスでは,個々の子どもや学級全体の学校適応感の状態について,結果をプリントアウトできます。ただ,①その結果をどう解釈するか,②解釈を生かしてどう支援するか,については詳細には述べていません。

①については,日頃の観察や直接のやりとりの結果とアセスの結果を照らし合わせて判断してください。開発のプロセスでは,教師の観察では「問題なし」とされていた子どもでも,アセスでは「適応上の課題あり」となる子どもも3~4割いました。

これは6~7割程度は教師の観察で子どもの状態は把握できるけれども,教師が見逃しているかもしれない子どもをアセスは拾い上げている可能瀬があることを示しています。アセスの結果と日頃の観察とのズレを検討することで,より深い子ども理解が可能になると考えられます。

②についてですが,たとえば「非侵害的関係」得点が低い子どもは何らかの原因で”侵害”を感じて苦しんでいることを示します。

それは教師が気がつかなくても,隠れたところで侵害的行為を受けていることを反映しているのかもしれません。だとすれば早急な支援が必要です。また,時には過去の経験から被害妄想的になり,”友だちから無視されることがある”気がするようになっているのかもしれません。

その場合は実際には侵害的行為を受けてはいないことになりますが,苦しんでいるという点では同じです。30点未満の子どもに対しては早急な支援を,40点未満の子どもに対しても,意図的で集中的な支援が必要です。

なお,研修のやり方については,「アセスの使い方・活かし方」(ほんの森出版)の中にも書かれていますし,eラーニングサイトでも研修講座が公開されていますので,そちらをご覧になっていただいてもいいでしょう。

なお,会員になられた方は,AISESの資料であることを明示していただければ,パワーポイントのデータをプリントアウトして校内研修等で使用していただいてかまいません。

Q4 アセスを小学校1,2年生に使用することはできますか?

A4 「してはいけない」ということではありませんが,「結果は正確ではない」「数値を低く考える必要がある」ことなどを十二分に理解して使用することが重要です。

アセスの開発の際には,小1,小2を対象にデータを取っていますが,最終的には,「小1,小2の回答は信頼性や妥当性の部分で疑問が残る」ので「CD-ROMには入れない」ということにしました。ただ,「小1、小2にも実施したい」という声は多く聞いています。そこで,少し長くなりますが,「では,実施するとすれば,どうすればいいのか」ということについて説明します。

まず第一に,文章の理解力が十分でなかったり,逆転項目(・・・ではない)への回答の仕方が分からないということが考えられます。その場合,「回答が正確でない」可能性が高まります。そこで「簡単に解説をする」「平易な言葉に置き換える」「回答の仕方を説明する」といった配慮が必要になります。

第二に,34項目の質問に対して集中力を維持することが困難になるかもしれません。この場合も「回答が正確でない」可能性が高まります。そこで「2回に分けて実施する」「落ち着いている時間帯を使って実施する」「先生が読み上げながら実施する」といった配慮が必要になります。

第三に,そもそも小1,小2のデータベースがないという問題があります。そうすると,取ったデータを小3のデータベースに当てはめて分析をすることになりますが,一般的に適応感の素点は小3より,小1、小2の方が高いと言う傾向があります。つまり,小3で素点18点の子どもがちょうど真ん中だとしても,小1の場合は素点20点の子どもが真ん中かもしれないということです。ということは,本当は素点20点の小1の子どもを小3と見なして分析すると,本当は偏差値得点は50なのに,53とか,そういう数値になる可能性があるということです。そこで「出てきた数値は低めに解釈する」ということが必要になります。ただ,同じ尺度で測定しているわけですから,「A君とB君ではA君の方が高い」「おおむね良好(あるいはその逆)」といったことは判断は可能でしょう。

第四に,アセスはそもそも学校適応感を6つの側面から測定しています。それは子どもたちが,少なくとも6つの側面を分けて考えていることが前提となります。ところが小1,小2はどうやら6つに分けて考えられないのかもしれないのです。わかりにくいですが,アセスは開発の最初の段階で大学生を対象にデータを取りました。たとえば大学生は,「学校は・・・」「担任の先生は・・・」「学校の先生は・・・」という3つの質問文を分けて考えることができます。

しかし小1、小2の子どもにとっては「学校」も「学校の先生」も「担任の先生」もほとんど同じで,当然区別しないで回答する傾向があるということです。となると,そもそも「6つの側面から学校適応をみる」という前提が崩れてしまいます。これが小1,小2用のアセスを開発できなかった最大の理由です。

たとえば,「仲間に入れてもらえないことがある」と言う質問は非侵害的因子ですが,こういう問題を抱えている子どもは,友人サポート因子の「友だちは,わたしのことをわかってくれる」という質問にNoと回答するかもしれません。非侵害的因子と友人サポートは本来別のものなので,「侵害されていても友人サポートはある」となっていいのですが,それが分かってくるのは小3以降ぐらいで,小1、小2では,「仲間に入れてもらえないことがある」=「友だちは,わたしのことをわかってくれない」となってしまう傾向が強い,ということです。

ということは「回答の一つ一つの質問文を大切に回答を読む」「何かの因子が低い場合は,ひょっとしたらそれ以外のところにも原因があるかもしれないと思いながら解釈する」といったことが必要になります。いずれにしても,「結果を鵜呑みにせず,日頃の観察を大切にしながらデータを解釈する」ことが高学年以上に求められることになります。

以上,長くなりましたが,実施時には「簡単に解説をする」「平易な言葉に置き換える」「回答の仕方を説明する」「2回に分けて実施する」「落ち着いている時間帯を使って実施する」「先生が読み上げながら実施する」と言った配慮を必要に応じて行うこと,また結果が出た後には,「出てきた数値は低めに解釈する」「回答の一つ一つの質問文を大切に回答を読む」「何かの因子が低い場合は,ひょっとしたらそれ以外のところにも原因があるかもしれないと思いながら解釈する」「結果を鵜呑みにせず,日頃の観察を大切にしながらデータを解釈する」といったことを意識することが重要です。

 


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