執筆:金山 健一

 

攻撃性がエスカレートすると、対教師暴力につながるケースも多くあります。子どもから反抗的な目でにらみつけられたとき、子どもの攻撃性をエスカレートさせないためには、次の三つの視点を心がけたいものです。

①    的確なアセスメント

 子どもから反抗的な目でにらみつけられたときは、まず、他のどの教師に対してもそうなのか、特定の教師だけに向いているものなのかを判断することが重要です。
前者の場合は、教師全般に対する反抗心をもっており、教師が怯えたり、媚びてきたりすることへの快感が、攻撃性を増幅させる恐れがあります。
同級生の力の誇示が目的になっていたり、ゲーム感覚になったりしている場合も考えられるので、学年・学校全体で早期に対応することが必要です。
その場しのぎの対応を続けていると、あっという間に先生をバカにするような風潮が広がり、学校全体が荒れてしまいます。

 後者の場合は、「教師自身の課題」と、「子どもとの関係性の課題」がある場合が多いようです。まず、子どもから反抗的な目でにらみつけられることの多い教師は、ある一定の特徴をもっているように感じます。正論だけを振りかざす、一方的に決めつける、「以前もこうだった」と、過去のことを持ち出す、「なぜ、こんなことをしたんだ」と、背景や子どもの心理を考えずに表面的なことにしか目がいかない、などです。

②生態学的心理学的特性からの攻撃性の理解

 思春期は、性と攻撃衝動に突き上げられ、体ごと変化していく時期です、攻撃性は、生態学的にプログラムされた行動パターンです。
まず、内的攻撃性(教師に対する敵意)が意識化され、それが日常の関係性の中で増大されていきます。
そして、些細なきっかけ(誘因)によって、例えば「にらみつける」という行動段階に進んでしまうのです。

 攻撃性が高い子供への対応では、「内的攻撃性が意識化されたときの予防的対応」「きっかけ要因・引きがね要因の防止」「行動段階への危機対応」を的確に行い、抑圧するのではなく、攻撃行動として発動しないようにすることが必要です。
反抗的な目で教師をにらみつけるのは、「ディスプレー」です。ディスプレーとは、チンパンジーが仲間に自分の力を見せつけ、リーダーとしての確固たる地位を築くための威嚇行動です。
子どもが髪型や服装で目立とうとし、自分たちの存在を誇示しようとするのは、教師に反抗することによって、問題行動を起こすグループの中での地位が上がるからです。
「子どもはディスプレーするものだ」と考えると、教師のアプローチに余裕が生まれます。

チーム支援の実施

(1)興奮を沈静化する方法

子どもの攻撃性をエスカレートさせない三つの視点 指導の際に、子どもが反抗的な目で教師を担見つけた場合、ほかの子どもたちは事の成行きをじっと観察しています。その場での注意・指導が原則ですが、改善が見込まれない場合は深追いせず、「あとでゆっくり話そう」と、いったん時間と距離を置くことも必要です。

にらむという興奮状態も、長時間を続きません。時間をおいてから、他の子供のいない相談室などで個別対応します。

 子供が教師ににらみを利かせ、さらに暴力行為の恐れがある場合は、その教師をすぐに移動させることが原則です。
対象者をなくすことで、興奮も鎮静化させるのです。これは、教師の安全を守るだけではなく、子どもを守ることにもつながります。

(2)情報のクロス化とチーム支援

 子どもからにらみつけられ、反抗的な態度をとられると、教師は自信を失い、誰にも相談できず孤立感を強めてしまいがちです。
状況が悪化すれば授業不成立や学級崩壊を引き起こす可能性もあります。Y先生から相談を受けた私は、休み時間や放課後、何気なくA男に話しかけました。
「Y先生は、A男のことを本当に心配しているよ。昨日もA男の進路ことを調べていたよ」とポジティブなメッセージを伝えY先生の価値を高め、A男とY先生の信頼関係を構築する作業を行います。
一方的にしか教師を理解しようとしないA男に、別の教師が、別の情報をあえて入れる「情報のクロス化」で、認知の変化を生じさせるのです。
一人で抱え込むのではなく、チームで対応することが有効な手立てとなります。
複数の教師から「君のことを見ているよ」というメッセージを送られることは、想像以上に子供を安定させ、成長を促すのです。

 

(本稿は「金山健一 『子どもの攻撃性をエスカレートさせない三つの視点』ほんの森出版2012年6月号」を要約したものです)

『AISES 学校教育開発研究所』は子どもと学校の支援、教育に携わる人材育成を行う ことを目的とした団体です。eラーニングや直接研修などを通して、発達障害支援を含む学校教育現場の様々な課題に対応する理論・実践例・教材・教具等を提供します。活動の参加や詳細は、HP https://aises.info/ または☎ 082-211-1030 まで。