執筆:堀田 彩
監修:栗原 慎二

■デートDVは誰にでも起こる可能性がある

 前回は、デートDVの例を紹介しました。
認定NPO法人エンパワメントかながわ(2017)の調査によれば、このようなことを、交際経験のある10代女性の43.8%、男性の26.7%が経験しているということがわかっています。(『「白書VOL5」全国デートDV実態調査報告書』)

 デートDVがよく起こる理由は、デートDVの要因やつながりやすい考え方を多くの人が持っているからです。以下に要因、第5回で考え方を紹介します。

■デートDVの要因

力による支配

第1回でも書きましたが、デートDVにおける暴力は、暴力を振るうこと自体が目的ではなく、交際相手を思い通りに動かす手段として用いられます。
親密な関係である交際相手は自分の思い通りになるはずだ、思い通りにしてもいいはずだという考えが暴力を振るう側にはあります。

本来、交際する2人は別々の存在であり、対等なはずですが、一方が「力」により相手を支配していいと思っています。
これは、無意識、もしくは感覚的なもので、当人に自覚が無いことが多いです。

また、この力と支配の構造は、デートDVだけに限ったことではありません。
例えば、親と子、教師と生徒、上司と部下、先進国と後進国・・・このように「力」を持つ方が、その「力」を行使して一方を自分の思い通りに動かそうとしていることは、社会のいたるところで見られます。

ときにこの力による支配は、好意の裏返しや、正しいこと、大したことではないこと、というようにすり替えられます。
「あなたのためを思って言っている」、「そうするのは当たり前だ、常識だ」、「好きだからこそ、言うんだ。どうでもいい相手には言わない」、「よくあることで、たいしたことはない」などです。
その実、それは自分の主張を通すための正当化・矮小化・責任転嫁に他なりません。そしてそのことに「力」を使う側は気付いていないことが多いのです。

暴力の容認

 「暴力は悪いことですか?」と問うと、ほとんどの人が「悪いことだ」と答えると思います。
しかし、「条件付き」ではどうでしょうか、「正義のためなら暴力も許される」、「軽い暴力なら大丈夫」、「相手が先に手を出してきた場合は仕方がない」・・・どこまでが暴力ではなく、どこからが暴力なのでしょう。それは、とても難しい問題かもしれません。

 しかし、はっきりしているのは、暴力で問題は解決しないということです。
理由は2つあります。一つ目は、暴力は連鎖するものだからです。
力を持つものから持たないものに振るわれた暴力は、振るわれた側に怒りや屈辱を生みます。そして、そのうっぷんは、さらに力をもたない者にぶつけられ、さらなる暴力を生みます。
もしくは、自分に対しての暴力に形を変えることもあります。
虐待を受けて育ったり、DV家庭で育ったり子どもたちが、自身も暴力の問題を抱える傾向を持つことは、広く知られています。

 二つ目は、暴力はエスカレートするものだからです。
事件としての報道されるようなDV、デートDVは、殺人や暴行傷害、リベンジポルノ(別れた腹いせなど恨みを持った者が、恨みを持つ個人の私的に撮影された性的な画像を、第三者が個人を特定できるような方法で不特定多数に提供する行為のこと)など、あきらかな暴力が起こっています。

しかし、そのようなひどい暴力は、突然発生するわけはありません。
事件に至る経過を見てみると、最初は見過ごしがちな「小さな暴力」だったのが、だんだんとスカレーとしていったことが分かります。

 このように、ひとつの小さな暴力と思っていても、たくさんの重篤な暴力につながる可能性があると考えられます。
暴力では、根本的な問題解決には至らないのです。ですので、暴力は程度に関わらず容認せず、暴力以外の解決方法を選択する必要があると思います。

性別による偏った見方

 最後は、社会的な性役割という要因です。みなさんは、「男らしさ」、「女らしさ」と聞くと、どのような特性を思い浮かべますか?多くの人が、以下のような特性を思い浮かべるのではないでしょうか。

 

男らしさ
  • 強い
  • 頼もしい
  • 泣かない
  • 弱音を吐かない
  • 稼ぐ など
女らしさ
  • やさしい
  • おとなしい
  • かわいい
  • 従順
  • 世話をする など

 

 一つひとつの特性をみると、どれも素晴らしい特性です。
しかし、男らしさと女らしさを比べてみると、なんとなく力関係(すなわち男性が強く偉い存在で、女性が弱く守ってもらうべき存在だという主従関係)があるように見えませんか。
デートDVの被害者に女性が多い理由のひとつであると考えられます。

 

私たちは、子どもの頃から(もっと言えば、赤ちゃんのときから)年齢が上がるにつれ、この社会的な性役割を刷り込まれていきます。
社会がそのように成り立っているため、性役割に従うことは、適応することとも言えるでしょう。
特に日本は、世界的にみても社会的な男女差(ジェンダー・ギャップ指数)の強い国で、世界経済フォーラム2017年発表では、144カ国中114位となっています。

 社会的な性役割の良し悪しは、難しい問題です。
ただ、言えるのは、社会的な性役割の前に、個人の特性が尊重されることのほうが自然だろうと言うことです。

そのため、社会的な性役割に負担感や違和感を持っていたり、成長や活躍の機会を奪われたりしている人が、性別に関係なくいるという現実があります。
このことを知っておくことは大切なことだと思います。
また、皆さんの中にも、意識されていないまま性別による偏った考え方があるかもしれないということを自覚しておくことが、子どものデートDVの問題を取り扱う場合にも、とても重要になります。

 

さて、学校教育に目を向けるとどうでしょうか。
教師が怒鳴ることで秩序を維持しようとしたり、威圧的な態度で子供たちに接したりしている場面がないでしょうか。
あるいは知らず知らずのうちに社会的な性役割を学校が要求しているという場面はないでしょうか。「女らしさ」「男らしさ」を求める教育にはその危険性を感じます。

 昔、ランドセルの色といえば、男は黒・女は赤でした。
徐々にそうした“常識”は壊れてきて、“人はそれぞれ違うもの”“違っていることに良いも悪いもない”“違っていることを受け入れあうのが当たり前”というのが常識になっていくことは、良い兆候なのかもしれません。

第5回は、デートDVにつながりやすい考え方 を紹介します。

 

【執筆者のプロフィール】
堀田 彩:AWARE認定デートDV防止ファシリテーター。デートDV防止のための出前授業を中・高・大学で行っている。産業カウンセラーとして、職場の環境改善・従業員のメンタルヘルス・サービスにも取り組んでいる。

 

『AISES 学校教育開発研究所』は子どもと学校の支援、教育に携わる人材育成を行う ことを目的とした団体です。eラーニングや直接研修などを通して、発達障害支援を含む学校教育現場の様々な課題に対応する理論・実践例・教材・教具等を提供します。活動の参加や詳細は、HP https://aises.info/ または☎ 082-211-1030 まで。