執筆:堀田 彩
監修:栗原 慎二

性・人権について

以前に出会った生徒です。

Aさんは非常にやさしい生徒でした。普段は元気でしたが、体調が悪いといって2~3日休んだことがありました。登校後も本人は「大丈夫です」と言うのですが表情が暗く心配をしました。その後、話していくうちに関係を迫られ拒否していたのですが、「俺のことが嫌いなのか」と言われ、拒み切れずに関係をもち、妊娠。そして中絶をしたということを話してくれました。

 こうした事例をデートDVと言います。表面には出ませんが、実は多くの子どもたちが被害にあっています。不登校やいじめ、学業不振、非行、過換気症候群、摂食障害などの背景にデートDVが潜んでいることもあります。

 

■デートDVとは

 デートDVとは、未婚のカップル間で起こる暴力のことです。
そもそもDVとは「Domestic Violence(ドメスティック・バイオレンス)」の略で、夫婦や事実婚等の親密な関係において、相手から振るわれる暴力のことをいいます。そのような暴力が、まだデートをするようなお付き合いをしている中・高校生、大学生の子どもたちの間でも起こっています。

■どれくらい起こっている?

 デートDVは身近に起こっていると言えます。
2015年の内閣府の調査(「男女間における暴力に対する調査」)では、交際経験のある20歳以上の女性の5人に1人、男性の10人に1が、交際相手から「身体に対する暴力」、「精神的な嫌がらせや恐怖を感じるような脅迫」、「性的な行為の強要」のいずれかの暴力を受けた経験があると回答しています。

■暴力の種類

 「暴力」と聞くと、皆さんはどのような行為を思い浮かべるでしょうか。実は、デートDVに該当する暴力にはいくつかの種類があります。

身体への暴力

 叩く、殴る、蹴る、首をしめる、腕をねじる、髪をつかむ、引きずりまわす、物をぶつける、刃物などを身体に突き付ける、無理やり酒や薬を飲ませる、など。

心への暴力

心無い言動などが該当します。
大声でどなる、人前で恥をかかせたり命令したりする、ダメなやつとかバカなやつなどと見下す、物を投げたり叩いたりして脅す、別れるなら死ぬとか家族に危害を加えると言って脅す、大切にしているものを壊したり捨てたりする、無視をして口をきかない、自分が悪いのにおまえが悪いと責める、など。

金銭的な暴力

いつもおごらせる、借りたお金を返さない、相手の経済力に合わないお金を払わせる、デート代やプレゼント代のためにアルバイトを強要する、など。

性的な暴力

合意なくキスや性行為を行う、避妊に協力しない、裸の画像や動画を撮りSNSなどで拡散する、ポルノビデオや雑誌を無理やりみせる、など。

束縛の暴力

電話やメールをチェックしたり制限したりする、友人付き合いやサークル活動、アルバイトなどを制限したり禁止したりする、頻繁に連絡したり連絡するよう強要する、自分を最優先しろと強要する、など。

 

最近では、携帯電話やスマホの普及を背景に、インターネット、SNSを用いた暴力が増えています。

 

■暴力は相手を支配するための手段

 このような暴力は、交際相手をコントロールするための手段として用いられます。
すなわち、デートDVの加害者は、暴力により交際相手を自分の意のままに支配しようとしているのです。「付き合っているのだから、相手は自分のもの」、「好きだったら、自分の言うとおりにしてくれて当たり前」などの意識を加害者は持っています。そして、交際相手の気持ちや考え方、個性を尊重せず、暴力により相手を従わせ「自分の理想の交際相手」を得ようとしているのです。

 ■デートDVの影響

 デートDVは、被害者に深刻な影響を与えます。酷い暴力を受けたり長い期間暴力にさらされたりすると、暴力から逃れた後にもその影響が続くこともあります。

心への影響

気持ちが落ち込んだままになる、自分には価値がないと思う、投げやりな気持ちになる、意欲が無くなる、不安が強くなる、自分の気持ちや考えがわからなくなる、など。

体への影響

ちょっとした物音や人影に驚き怯える、心臓がどきどきして息が苦しくなる、頭痛・腹痛や吐き気がする、体が重く疲れた状態が続く、など。

人間関係への影響

親や友人は必要ないと思う、自分を大切にしてくれる人はいないと思う、人を信用できなくなる、人の顔色を伺ったり好みに合うように振舞ったりする、など。

 

また、加害者側にはDV防止法やストーカー規制法において、暴力行為やつきまといに対し警察が介入したり、罰則が科されたりすることもあります。当然、暴行、傷害、性犯罪など事件となる場合もあります。

 

このように、デートDVは子どもたちの生活や人生に深い傷跡を残すことになります。被害者にはカウンセリングや教育相談が必要になります。ただ、大切なのは子どもたちを、デートDVを受ける側にもする側にもさせないためには、正しい知識を身に着け、対処法や予防法について知っておく必要があります。

 

◎  第2回は、デートDVはなぜ起こるのか です

【執筆者のプロフィール】
堀田 彩:AWARE認定デートDV防止ファシリテーター。デートDV防止のための出前授業を中・高・大学で行っている。産業カウンセラーとして、職場の環境改善・従業員のメンタルヘルス・サービスにも取り組んでいる。

『AISES 学校教育開発研究所』は子どもと学校の支援、教育に携わる人材育成を行う ことを目的とした団体です。eラーニングや直接研修などを通して、発達障害支援を含む学校教育現場の様々な課題に対応する理論・実践例・教材・教具等を提供します。活動の参加や詳細は、HP https://aises.info/ または☎ 082-211-1030 まで。