3月8日から12日まで,学生3名を含め総勢12名で4泊5日の香港ツアーに行ってきました。中華料理ツアーではなく,まじめなツアーで,特別支援学校,香港バプテスト大学附属小学校,同附属幼稚園,セミナー(栗原が日本の実践を発表),香港教育局,香港大学,中文大学と,実にアクティブに視察をしました。

 このときの様子は,今後,コンテンツとしてUPしていく予定ですが,まずは簡単にですが,びっくりしたことやうなったことをいくつか報告します。

 まず,子どもですが,小学校1年から7時間授業と言っていました。学力に対する力の入れ様は日本を凌いでいます。ただ,それは生徒指導を軽視するということではないようです。附属小学校では,朝の学級活動は毎日30分,帰りは15分とのことでした。つまり毎日45分!単なる連絡のための学級活動ではないわけですから,これはすごいことだと思います。このことからは,学力だけではなく生徒指導も十分に重視されていることが分かると思います。要するに教育が重視されていると言うことです。

 もう一つは教員研修です。香港の教員は3年間で150時間の研修を受けることが推奨(ほぼ義務?)されています。単純計算では10年で500時間です。一方の日本は10年で30時間です。また,大学は教育局との連携の中で生徒指導担当者用の約100時間の講座を用意してあり,教師は生徒指導担当になると,このコースを受講することを推奨されます。生徒指導主任になるとこのコースを受講し認定されることが必須になります。日本では,大学と行政の協力の下にそうしたコースが開発されているということは聞いたことがありませんし,そもそも100時間研修が義務化されていることもありません。車の運転に例えれば,香港の場合は,学校という車を運転する生徒指導主任にはライセンス取得のための教習が義務付けられているのに対して,日本の場合は「あの先生は生徒指導がうまそうだから」ということだけで推薦されて運転を任されるわけです。学ぶ場が用意されていないわけですから,その運転は経験則に頼るものになるのはやむを得ません。エビデンスベース,理論指向の香港との差を痛感します。ちなみに台湾の方がもっとシステムは整っていると思われますが,それはまた,別の機会に譲ります。

 香港の特別支援学校の教員研修の例です。まず,「毎日30分の研修時間」があります。耳を疑ったので,思わず,「事務連絡の時間ではないのか?」と確認しましたが,本当に研修でした。週2回はスクールソーシャルワーカー(SSW)や言語療法士(ST)等が輪番で担当します。別の週2回は生徒指導主事です。そしてあと1回がサイコロジストで重い事例を扱ったりするそうです。毎週2時間半の研修です。単純計算ですが,SSWについて年17.5時間,STやその他の専門的研修を17.5時間,生徒指導や教育相談に関する研修を35時間,事例検討を35事例17.5時間と言う計算です。

これに加えて香港のすべての学校は,年に3日は学校を休みにして(夏休みではありません)研修を行うことになっています。附属小学校では5~6日と言っていました。

 私は今回の訪問で香港は5回目ですが,訪問するたびに差を広げられている印象があります。教育は結局のところ教師の質によって大きく左右されます。その教師の質は研修によって大きく左右されます。日本の教員採用基準はある意味厳しく,善意で優秀な人材が集まっていると信じたいわけですが,そうだとしても,これだけの研修の質と量に差があると,10年後の力量の差は歴然です。

 ちょうど出発の日,府中の事件がニュースになりました。詳細を知らないで突っ込んだコメントをするのは差し控えますが,学校のあり方,教師のあり方に問題がなかったとは言えません。「日本の教育は,本当にこのままで大丈夫なのか?アジアはとっくの昔に先を行っている。日本はどんどん置いて行かれている。抜本的な手を打たなければらないのに何で小手先の対策を打っているんだ??」・・・視察をしながら,そんなことを考えていました。