執筆:栗原 慎二

いじめの4層構造

いじめに対してどう手を打てばいいのか。
そのことを考えるために、まず,いじめがどのようなものなのかを理解する必要があります。

森田洋司先生らは、いじめを被害者、加害者、観衆、傍観者の4層構造で捉えていらっしゃいます(森田・清水,1996)。いじめに対して,「できるだけかかわらないようにした」という傍観者層は、校種によって若干違いますが,おおむね約4割でした。また,観衆層もほぼ同様の割合でいます。ただ,重要なのは何割という数字ではなく,こうした観衆層や傍観者層からの黙認や是認を一種のエネルギーとして,いじめは継続しエスカレートしていくと言うことです。

もう一つ,押さえたいことがあります。それは仲裁者の存在です。この仲裁者の割合が日本は小中高と学校段階が進むにつれて低下していきます。実は,このことについては国際比較調査があるのですが,イギリスやオランダでは中学1,2年生頃までは日本と同様に救済者が減少するのですが,その後,反転して増加するようになります。しかし,日本は中学・高校と仲裁者は減少しつづけ,傍観者は増加し続けます(森田,1999)。

 

いじめは近い関係の中で起こる

いじめの実態

いじめはどのような人たちの中で起こるのでしょうか。先に見た森田ら(1999)の調査によれば,「同じクラスの人」が80%、「クラスの違う同学年の人」が24%です。また,その関係は,学校種や男女によって違いはありますが,「よく遊ぶ友だち」関係であるのが44.1~51.8%と一番多く、「ときどき話す友だち」と会わせると約80%に及びます。

つまり,いじめっ子といじめられっ子は、よく話したり遊んだりする友だちであったり、ときどき話したりする友だちです。だから教師からすれば,「よく遊んだり話したりする」メンバーが,いつものように楽しそうにやっているように見えるわけです。

このように教師の前では,いじめはせずに一見仲良く遊んでいて、休み時間や放課後など教師の目の届かないところで残念ながらいじめが起こっているので、気が付かないこともあって当然と考えたほうが合理的でしょう。

 

つまり、いじめというのは、休み時間や放課後、部活動、登下校時など、教師の目の届かない時間帯や場所で起こって、一般的には一対一というよりは複数の人から悪口やからかい、仲間外れや無視などの見えにくい形で行われます。前述したように、男子の場合は直接的、暴力的ないじめが多いのに対し、女子の場合は悪口や無視など、特に分かりにくい形で行われることが多いです。

このような状況の中で、半数の子どもたちはいじめに関わらないようにし、救済を試みる子ども、慰める子ども、第三者に伝える子どもが年齢とともにどんどん減少し続けます。そして、子どもたちは誰にも相談しなかったり、解決をあきらめたりすることを選択するということが現状なのです。

 

森田洋司・清水賢二 1996 「いじめ-教室の病い」金子書房,

森田洋司研究代表(1999)いじめ/校内暴力に関する国際比較調査,平成 8-10 年度科学研究費補助金<国際学術研究>研究成果報告書

森田洋司・滝 充・秦 政春・星野周弘・若井彌一編著 1999 日本のいじめ―予防・対応に生かすデータ集 金子書房

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