執筆:栗原 慎二

ネットいじめは従来型いじめの延長線上にある

 今日のいじめを考える場合,ネットいじめの問題は避けて通れません。スライド26を見てください。私たちが行った調査の結果の一つですが,4160人に調査を行ったところ,その6.9%に当たる285人の生徒が半年以内にネットいじめを経験しています。一学級に6~7人の割合です。ちなみに加害経験者は287人で,ほぼ同数です。このように子どもたちの世界では,ネット上でのいじめは相当に広く蔓延しているものと思われます。そこで少しだけですが,ネットいじめについて,コメントをしておきたいと思います。

 従来,このネットいじめに対しては,リテラシー教育の重要性が強く主張されてきました。その重要性については,私も当然認めています。しかし,それだけでは大切なことを見落とすとも思っています。ネットパトロールの強化などで掲示板や裏サイトなどを見張ることも重要ですがが,メールとなると手の出しようもありません。

 

 実は私たちが以前おこなった研究では、従来型のいじめ加害経験のない者でネットで加害行為をする者もいるのですが,その数は3496人中109人で3.1%に留まりました。つまり従来型のいじめ加害をしていない者の96.9%はネット上でもいじめをしないということです。一方,従来型のいじめ加害経験のある664人についてみると,その26.8%に当たる176人は,ネット上でもいじめ加害を行っていました。その発生率は8.6倍になります。

 

 実はこれは被害者でもほぼ同じような割合になります。つまり,従来型いじめ被害者は,ネット上でもいじめ被害者に圧倒的になりやすいと言うことです。また,その加害者の所属ですが,クラスの人(44.6%,複数回答可)や部活動の人(19.9%,複数回答可)となっていて,きわめて近い関係性の中でネットいじめが起こっていることが分かります。

 

 このことから言えることは,ネットいじめも従来型のいじめの延長線上にあると考える方がより現実的であり,対策の基本は従来型いじめに対する対策と大きくは変わらないと言うことです。いじめをしない子どもを育てると言うことです。

 

 とはいえ,従来型のいじめをしないがネット上では加害者になっている割合は3.1%と少なかったわけですが、実数は109人います。従来型とネットの両方のいじめをやっている人数が176ですので、決して少なくありません。そこには匿名性の高さなどのネット独自の特性が働いていると考えてよいでしょう。ですから上記の対策を基本にしながらも、ネット特性を踏まえた対策も行っていく必要があります。

『AISES 学校教育開発研究所』は子どもと学校の支援、教育に携わる人材育成を行う ことを目的とした団体です。eラーニングや直接研修などを通して、発達障害支援を含む学校教育現場の様々な課題に対応する理論・実践例・教材・教具等を提供します。活動の参加や詳細は、HP http://aises.info/ または☎ 082-211-1030 まで。