前回のブログで,教育相談コーディネーターについて,過去数十年、ここまで突っ込んだ報告はなかったこと,それは新しい可能性を開く画期的な決定となる可能性を秘めていることを指摘しました。

 これから注視していかなくてはならないことはいくつか思いつきます。

 一つ目は,この報告書で書かれたことが本当に具体化するのかと言うことです。「教育相談コーディネーターの配置・指名には、担当教員を追加で配置する」という記述を実現するには予算的な措置も必要ですし,そうは簡単には進まないでしょう。この点がどのようになっていくのか,国や各地方自治体の動きにかかっている部分があります。このことを注視し,必要があれば声を上げていく必要があると考えています。

 二つ目は,教育相談コーディネーターは何をするのかと言うことです。報告書には,教育相談コーディネーターの主な業務として,①SC、SSWの周知と相談受付,② 気になる事例把握のための会議の開催,③SC、SSWとの連絡調整など8つの項目が例示されています。これを見るとまさにコーディネーターという印象ですが,学校心理学に位置づけると,活動領域が三次的支援の一部のみに限定されています。これで本当に学校が回るのかというと,私たちの実践経験からは,答えはNoだと断言できます。たとえば不登校児童生徒数を減少させるには予防的な取組を進める必要がありますし,そのことはこの「児童生徒の教育相談の充実について~学校の教育力を高める組織的な教育相談体制づくり~」報告書にも書かれています。平成28年7月の「不登校児童生徒への支援に関する最終報告」(不登校に関する調査研究協力者会議報告)にも「・・・9年間を見通して予防的な生徒指導を充実させたりすること等により、不登校を未然に防止する取組を推進することが重要である」といったかなり突っ込んだ記述があります。これは,カリキュラムや教育プログラムのあり方を教育相談の視点から再構築することの必要性を示唆していますが,このことは先の報告書には書かれていません。また,不登校等を生まない学校づくりのためには教員の力量形成は不可欠ですが,これについてもわずかに,⑧校内研修の実施とあるだけですし,校務分掌等を含む学校体制づくりについては全く触れられていません。不登校やいじめといった問題に対処するためには,今回の報告でも取り上げられている①対処的支援以外に,②教育プログラムの実施による予防的・開発的支援,③それを可能にする教員の力量形成,④以上の①~③を具体化する学校体制づくりの4つが必要なのですが,②~④についてはほぼ何も触れられていないと言うことです。これは今後の大きな課題となってくることでしょう。

 三つ目は,上の項目と絡むのですが,こうした教育相談コーディネーターを養成する教員研修プログラムがほとんど開発されていないと言うことです。実は,いくつかの自治体では教育相談コーディネーターがすでに指名されています。ただ,その職務内容は不明確であると同時に,養成プログラムで養成されていると言うよりは,まず人を指名して,その人なりにやらせているというのが実体のようです。これではうまく回るはずがありません。生徒指導主事も同様ですが,ただ指名だけして,職務内容も曖昧で,トレーニングもない訳です。これでうまくいくわけがないと考えています。

 以上,3つの課題を述べましたが,そうは言っても,「大きな一歩」であることに間違いはありません。この動きをさらに前に進めることが重要だと考えています。

 実は,AISESで公開されているコンテンツは,「二つ目」にあげた4つの力を形成するための内容です。教員免許更新講習で提供している研修内容も同様です。今年度,AISESはこうした国の動きに微力ながら貢献するために教員研修センターが募集した「平成29年度 教員の資質向上のための研修プログラム開発支援事業」に応募したところ,採択され,現在研究を進めているところです。日本の生徒指導・教育相談の発展のために,研究機関としての役割を果たしていきたいと考えています。