平成25年に『いじめ防止対策推進法』が制定されたが、いじめは少しも解消されないように思える。法律を制定しても十分に学校に浸透せず、機能していないという状況がみられる。いじめ問題は頻繁に起きていると言わざるを得ない。いじめ指導の基本に何が必要か、さらなる追究が必要に思える。
 そうした現状から『月刊教職研修』(27年12月号・教育開発研究所)は、「わが校の『いじめ』対応は機能しているか」を特集した。その中で特に関心をもったのは橋本定男元教授(現高崎経済大)の提言である。その提言は「いじめに強い学級づくり」を内容としていたからである。つまり、「いじめにつながる問題を子どもが解決していく。いじめ防止の基本ではないか」とする考え方に共感するからである。しかも、それを個々の子ども中心ではなく、学級づくりとして問題解決する、その指導の基本が重要なのである。学級の中には、いじめる子、いじめられる子、仲裁する子、傍観する子などが存在する。そうした個々の子どもが、自分の学級で起きているいじめ問題に正対する雰囲気や環境を創る。これまでもいじめに関する論文は多くみられたが、学級づくりを正面にすえたのは少なかった。しかし、極めて重要なカギがそこに見いだされるように考える。
 フィンランドにKiVa(キヴァ)といういじめ防止プログラムがある。いじめの被害者、加害者、傍観者それぞれが受ける影響を考えて、年間10回に分けて(2教時連続)多様な授業を行う。互いの責任感に目覚めさせ、学級全員が問題意識を変化させるように働きかける。特に重視しているのは保護者への働きかけである。こうした諸外国の例に比べると、わが国のいじめ指導は、全ての子どもに対応した指導が手薄い印象がある。
 橋本教授は、いじめに強い学級づくりを進めるために校内研修を主に記述しているのであるが、学級づくりを機能させるためには学級活動の話し合いや道徳の時間の実践化が必要であろう。基本は、いじめ問題防止のために学級全員を巻き込む指導である。「支持的で温かい学級集団を目指す。同時にリアルな問題発生の機会を生かし、話し合いできまりをつくる問題解決活動を組織する」としている。文言は短いが、学級づくりの大切さが伝わってくる。
 いじめ指導は繰り返し強調され続けてきた。その後もたびたび自殺事件は起き、多様な問題を投げかけてきた。そうした問題への取り組みはどう効果をあげてきたであろうか。指導の効果を一層高めるための方策が、いじめ防止対策推進法ではないかと考えれば、その実効性について改めて深く考えざるを得ない。
                     (日本教育新聞 2016/01/18から引用)