「子供は宝」ならば,どう育てればいいのだろう?

 「日本は資源のない国」「人間だけが唯一の資源」「子どもは国の宝」という言葉は、私が若かった頃によく聞いた言葉です。シンガポールでも「シンガポールは資源のない国、人間だけが天然資源」「すべての子供が価値がある(Every Child Counts!)」という言葉がよく使われていました。この言葉を2つの観点から考えてみたいと思います。

 まずは経済の側面です。日本では世界経済の悪化、国家財政の悪化などの影響を受けてか、いつしか「教育を聖域とせず」という言葉が使われるようになり、結果、日本の教育予算は圧縮されてきたように思います。

 実際はどうかというと,OECD諸国における教育予算の平均はGDPの5.6%ですが,日本は3.8%で,データの存在するOECD諸国の中で最下位です。一般政府総支出に占める割合でみても,OECDの平均は12.9%ですが,日本は9.1%でイタリアに次いで下から2番目です(いずれも2011年)。

 一方,シンガポール教育局(日本の文部科学省に相当)を訪問した際、力説されたのが「シンガポールは資源のない国、人間だけが天然資源」「すべての子供が価値がある(Every Child Counts!)」ということでした。実際,教育関係予算は、防衛費に続く国家予算第2位の規模で、大体20%前後で推移しているとのことでした。

 もう一つは教育内容です。シンガポールは2011年までは,能力やスキルを重視した教育をしていましたが,2012年からは人間性を高めることに焦点を置いた教育に転換したとのことでした。この背景には,急速な社会の変化の中ではスキルを教えるには限界があり,学力やスキルそのものよりも,その前提となる人間性そのものを育てることが重要というパラダイムシフトがあったようです。「私たちの信念は,優れた人間性をもった人間はしっかりと学ぶということです」と笑顔で語られていたのが印象に残っています。

 PISA調査においてシンガポールは、数学2位(日本7位)、科学3位(日本4位)、読解3位(日本4位)と日本より高い学力を有しますが,一方で学力偏重ではなく,人間性重視の教育が行われている国でもあるということです。

 日本よりも高い学力を持ちながらも,声高に学力向上を叫ぶのではなく,「人間性の獲得」を重視し,そのために教育予算を投入すること,それが「人間だけが天然資源」とするシンガポールの姿勢だということです。学ぶべきことが多くあると感じました。