シンガポールに行ってきました。 これから何回か、シンガポールの教育について、ご報告します。

 シンガポールというと、学力が日本より高いとか、最近ではシンガ ポール大学が東京大学を抜いたと言ったことが知られています。 また、教育熱心さは日本の比ではないと言った噂もあり、実際どう なのか、確かめてきました。

 シンガポールの高い学力を支えているもの、それはやはり教育でし た。「人 がシンガポールの唯一の天然資源」という言葉は何人もの教育関係 者から聞きました。その教育は学力向上がメインではなく、むしろ人格形成で、 シンガポール教育局の複数のスタッフは、「優れた人格を育てさえす れば学力はおのずとついてくる」といった話をしていました。

 これは綺麗事として言っているのではなく、実際、視察した3つの 学校の校長の考え方を聞いても、また教育内容等を見ても、本気で そのように考えているようでした。その人格形成の方法論として採用されていたのが、社会性と情動の 教育(SEL)」と「Character Education」です。この方向性は2012年以降しっかり と打ち出され、現在のシンガポールの基本潮流になっているようで す。

 では、 学力はそれだけで形成されているのかと言うとやはりそうではなく 、別の要因もあるようです。例えばシンガポールでは12歳の小学校卒業段階で、 エクスプレスと言われる特進コース、普通学業コース、 技術系コースにそれぞれ約60%、26.5%、13.5% ずつ振り分けられることになっています。また、大学の数自体が少ないために大学進学が3割弱となっていると言うことも特徴です。

 こうしたことが背景にあるため、早期からの進路指導が加熱するといった側面もあるようですが、少なくとも、学校教育の力点は必ずしも学業指導にあるわけではないと言う事は事実のようです。

 シンガポールの高い学力は、それなりの背景はあるが、シンガポールの学校教育が学業指導に力点を置いているのではなく、むしろそれを支える人格の形成や、社会性と情動を育てることに置かれているという事は、学力向上ばかりを強調するようにさえ見える日本の教育行政のあり方と一線を画するものだと思います。